その賃金の決め方は適正なの?社長が賃金を決めるときのポイント

  • 従業員の賃金を決めるときのポイントを知りたい
  • どんなことに注意して、給料を決めればいいか知りたい
  • 賃金をきめる手順を知りたい

この記事は、そんな社長さま、人事部長さまに書いています。

①知らないと怖い賃金のルール
②知って得する決め方の賃金のポイント
できるだけわかりやすくお話しいたします。

では早速はじめましょう。

(*このページは2018年9月8日に更新されました) 

賃金とは何か



 
まず知っておきたいのが労働基準法における「賃金」の定義です。
「賃金とは、賃金、給料、手当、賞与その他名称の如何(いかん)を問わず、労働の対償として使用者が労働者に支払うすべてのものをいう」(第一章総則 第11条)

賃金になるのは、次のすべての満たした場合です。

  • 労働の対象であること
  • 使用者(≒会社)が支払うモノであること
  • 労働者に支払うモノであること


この3つを満たすとどんな名称でも「賃金」となります。
逆に一つでも満たさないと賃金にはなりません。
つまり、「労働の対象でない」会社から労働者の支払いは賃金ではありません。
具体的には、実費負担をおぎなう「旅費日当」などは「賃金」ではないのです。
また、定価400円の給食を会社が150円負担して、社員に250円に恩恵的に提供していた場合の差額150円も「賃金」ではありません。
他にも福利厚生のために支給されるユニフォーム、社宅の貸与も「賃金」ではありません。
ただし福利厚生費は、就業規則に「毎回150円を負担する」などと支給の条件と支給の金額が明記している場合は、「労働の対象」となり賃金になります
就業規則に明記していない、恩恵的な実費弁済、社宅、給食補助などの福利厚生的なモノは賃金になりません。
ここ微妙なんです。 でも影響は大きい


というのは、賃金に該当する場合には、残業などの割増賃金の計算の基礎にいれるかどうかで、労働者と争いになる場合があります。未払い残業を専門に取り扱っている弁護士は、ここまでキチンと計算して未払い残業を請求してきます。


 

 
労働基準法、所得税法、健康保険、厚生年金法、労働保険など法律によって、賃金、所得、報酬の定義と範囲が微妙に 違ってきます。
この違いを理解して応用すると、手取りが増えたり、社会保険料負担が減ったり、今まで受け取れずに損していた年金がもらえたり
します。
実は賃金、報酬の違いをきちんと理解しているプロ
に相談して、決めることがとても大切です。


さて、話を労働基準法に戻します。

労働基準法の「賃金」に該当すると



労働基準法の賃金に該当すると、賃金支払いの5原則が適用されます。
使用者が、従業員に対して支払う賃金のルールのことです。法律によって明確に5つのルールが定められていることから、5原則と呼ばれています。
なお、賃金支払いの5原則とは、具体的に次の内容をいいます。


  1. 通貨払いの原則 (現金払いか同意の上で振り込み)
  2. 全額払いの原則 (法律に認められた天引きと労使協定書※1がある場合だけOK)
  3. 直接払いの原則 (労働者に直接支払うこと。親、妻などへの支払いもダメ)
  4. 毎月1回以上払いの原則 (少なくても毎月1回)
  5. 一定期日払いの原則(支払日を決めて、規則正しく※2
※1給食費や旅行積立を天引きする場合は、労働者の過半数を代表する者と「賃金控除の労使協定書」を結び必要があります。
※2賞与、退職金などは例外。 このように賃金の支払い方にはルールと手続きが必要になります。

賃金の決め方と就業規則


10人以上雇う時は就業規則を
社長さまはもちろん「就業規則」という言葉はご存知でしょう。

就業規則は、労働者の賃金や労働時間に関する規則や、職場内の規律などが定められたルールブックです。就業規則があることで、従業員が安心して働くことができ、トラブルを防ぐことにもつながります。
そして社長も、きちんと就業規則をつくることでストレスが減り、本業に集中することができるようになります。

10人以上雇う場合は就業規則の作成と届け出を


労働基準法第89条には、常時10人以上の労働者を雇う会社は、就業規則を作成し行政官庁に届け出なければならないと記載されています。
この10人には、パート・アルバイトなども含まれており、これらを含む従業員の代表者の意見書を添付しなければいけません。
このことから就業規則は、事業主が勝手に作成・変更することができず、賃金においても従業員の意見が反映されるようになります。

ところで10人未満だったら就業規則を作らないほうが得だと思いますか?実は社員一人でも就業規則は絶対に作ったほうがいいです。 社長は就業規則を作ることで、会社のルールを決めることができるのです。 
就業規則が無いと労働条件の具体的な運用ルールが無くなり、会社と真面目に働く社員に不利になります
社員が悪いことしたり、能力不足だったり、社長の指示に従わないときに、就業規則で懲戒すると決めてあるから、 それに則って厳しい指導や処分ができるんです。
就業規則が作っていなかったり、ルールをきちんと救っていない場合は、問題社員に対応できません。 実は就業規則は、会社と真面目に働く社員を守る道具なんです。

次に賃金を決めるときに、就業規則に関して注意しておくポイントをみておきましょう。 就業規則を良く理解せずに作成して、をしている社長さまが多いです。

就業規則に記載する3の事項
  • ルールがなくても、絶対に記載しなければならない(絶対的必要記載事項)
  • ルールがあれば、必ず記載しなければならない(相対的必要記載事項)
  • 会社が任意に記載することができる(任意記載事項)


賃金については、次のことが絶対的記載事項になっています。

  1. 賃金(臨時のものは除く)の決定
  2. 賃金の計算方法
  3. 賃金の支払の方法:直接支給、銀行振込等
  4. 賃金の締切日・支払日
  5. 昇給に関する事項
賃金についての相対的記載事項は次のとおりです。
  1. 退職手当の定めが適用される労働者の範囲
  2. 退職手当の決定、計算及び支払の方法
  3. 退職手当を除く臨時の賃金等(賞与、臨時の手当等)
  4. 最低賃金額
  5. 労働者の食費、作業用品費その他の負担


相対的に記載事項は、支払い予定や実施予定がなければ決める必要はありません。 就業規則で定めると、労働基準法によって支払い義務が生じます。



ひな形を使った就業規則や、先代の社長がプロに相談せずに作った賃金規定や退職金規定で、手痛い目にあっている2代目社長がいます。

また、就業規則の決め方次第で手取額や社会保険料、残業手当の支配額が変わることをご存じですか? さまざまな法律の組み合わせで手取額とコストが変わってきます。
例えば家族手当は従業員数に応じて支給されていると残業代の単価に含まれません。 住宅手当を支給するべきか、借り上げ社宅として貸与すべきなのか? その選択が手取額や残業手当の単価に影響がでることをご存じですか?


営業手当などの固定残業代をもし導入されている場合は、見直しをしたほうがいいでしょう。 使用者側敗訴の最高裁判例がでているため、固定残業手当については厳格な運用が求められます。

この判決は、
  1. 通常の労働時間に対応する賃金部分と割増賃金部分とを判別できること、
  2. その上で、割増賃金相当部分が法定の割増賃金額の額を下回らない場合
には、 割増賃金の支払いがされたと認められる旨を示しました。

最低賃金のルール

給与額は最低賃金法でも定められた額を下回らない限り違法ではありません。つまり会社独自の算出法を用いても、何を根拠として給与を決めてもいいのです。


賃金は労働者の生活を支えなくてはなりません。また国の景気や会社の状況によって、賃金が低くなり過ぎるのを防いでいます。そのために最低賃金法があります。
最低賃金額は各都道府県によって違い、東京では、時給985円(2018年10月)と定められています。

参考 平成30年度地域別最低賃金時間額厚生労働省
たとえ労働者が同意したとしても、これより低い金額での契約は認められません。 このため、もし法律より低い金額で働いてしまっても、法律によってそれは無効となり、会社は最低賃金との差額×働いた時間分の賃金を支払う義務が発生します。

最低賃金には、皆勤手当や通勤手当は算定から外されてしまいます。

  • 手取りを多くするのが良いのか?
  • 求人に有利にするのが良いのか?
  • 出勤率を上げるのが良いのか?

同一労働同一賃金の問題もあります。正社員の賃金、手当を決めるということは、契約社員、パートの時給、手当にも影響がでることをご存知ですか?これは別の機会にお話しいたします。

社長であるあなたがどんな結果を望むのかで、どの手当を選択するのか変わります。
手当の種類、手当の額、基本給の決め方で、従業員の求人、採用、定着、育成、その後の活躍に大きな差が生まれます。

最低賃金額で雇い続けるのは得なのか?


ここで問題になるのが「最低賃金で社員を雇うのか?」、「雇い続けることが得なのか」ということです。

仮に東京で正社員として1日8時間、月に20日間働いたとします。
985円×8時間×20日=157,600円(2018年10月) となり、月収15万7600円となります。

しかし、ここから社会保険や所得税などが引かれて、およそ13万近くになるでしょう。
家賃・生活費などを考慮すると、収入が13万円の状況で東京で生活することは、非常に困難です。会社がいくら従業員を雇いたいと思っていても、人材が見つからない恐れがあります

以上から、会社は従業員の生活の安定とモチベーションを持続できる金額を設定しなければいけません。人材不足の中、賃金水準が高い会社は有利です。

しかし経営上、どうしても、最低賃金額を基準に賃金を支払わざるをえない会社もあります。 その場合にはどんなことに気をつければ良いのでしょう?
事業主が従業員を雇う際は、働く地域の最低賃金だけでなく、近隣地域の一般的な生活費、ライバル企業の求人額などを考慮しなければいけません。

今は、人口減少社会です。ライバルより少し高目に設定しておくことをお勧めします。人手不足が深刻です。そんななかで昇給を考えている社長さまもいらっしゃるかもしれません。


昇給に助成金が使える場合がございます。そんな情報が気になる方は、助成金に詳しいプロにご相談をお勧めします。
従業員がモチベーションを保ち、 安心して働けるかどうか、 会社として長期的に安定して、優秀な人材を確保するためにも安心して働ける賃金と環境を用意する必要があるのです。


賃金は衛生要因です。 世間相場より低いと強い不満を引き起こします。 社員の給与の決め方、払い方はノウハウがあります。労働時間、休憩の取り方、休日、休暇の設定、パート、契約社員の労働条件と複雑に絡み合っていますが、しっかり決めていかなければなりません。

ノウハウを知っているか知らないかで、大きな差が生じます。あなたは大丈夫ですか?

賃金の決め方のポイントは?


社長が目が届く範囲、例えば10人以内の中小企業の賃金の決め方の手順をご紹介します。

  1. 労働基準法、判例を守る
       ・労働時間、休日が適法か確認する。
       ・固定残業代、残業単価が適法か確認する。
  2. 最低賃金法を確認する
       ・産業別の最低賃金に該当するか確認する。
       ・時給で換算し比較する。
  3. 求人募集ができる水準かどうかを確認する
       ・応募者数は?
       ・求人の3C分析をする
  4. 定期昇給が少ないために、離職者が生じていないか確認する。
       ・離職者が多い場合には、数か月前の離職者に本当の退職理由を聴く
       ・定期昇給をいれる(最低賃金に近い場合には昇給時期を変える)
  5. 賞与、退職金と基本給を切り離す
  6. どんな諸手当、現物給与、実費弁済を支払うか決める。
  7. 社員を職種別に、社長が見て「できる順」に並びかえる。
  8. 「できる順」の理由がキチンと説明ができるか、理由を考える。
  9. 基本給が「できる順」なっているか調整する。

正社員が10人を超えたら、簡単な人事・評価制度を作りましょう。
今なら助成金を活用しながら作成できます。



今は厳しい人口減少社会。

賃金に不満を持つとあなたが今まで頼りにしていたベテラン社員さえも転職してしまう心配があります。 そのため、定期昇給の仕組みを導入することをお勧めいたします。


最後までお読みいただきありがとうございます。 もしあなたがこの問題に悩んでいるとしたら、一度お話を聴かせてください。

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