社会保険労務士法人 ロームのお役立ち情報

2021.12.10

副業・兼業に関する法改正や適切な対応法などについてわかりやすく解説!

近年、副業・兼業に関する関心が高まっており、徐々に副業・兼業を許可する会社が増えてきていることはご存知でしょうか。2018年の副業解禁を始めとして、副業・兼業者に関する法改正など政府も積極的に副業・兼業を推進していることがわかります。

従業員の副業・兼業の扱いをどうするべきか、副業・兼業を解禁すべきかなど副業・兼業について悩まれている経営者の方も多いのではないでしょうか。

今回は、近年の副業・兼業者に関する法改正や今後の対応法について解説いたしますので、経営者の方はぜひ参考にしてみてください。

副業・兼業はもう解禁されている?

皆さんの中には、未だ「副業・兼業」は「やってはいけないこと・許されていないこと」という考えが根強く残っている方もいるかと思います。たしかに、未だ副業・兼業を許可していない企業が多いことは事実です。

しかし、日本社会における「副業・兼業を許可しない」という制度は2018年の時点で既に廃止されており、現在でも副業・兼業が禁止されているのは、会社の都合上の問題と以前までの副業・兼業禁止社会の雰囲気の名残によるものなのです。

これからの日本は副業・兼業を容認する社会へと変わっていくと考えられるため、副業・兼業についての考えを改められないままでいると、これからの日本社会に取り残されかねません。

つまり、新しい時代に適応するためには、副業・兼業についての理解を深め、副業・兼業について改正された法律の内容や、それらに対する適切な対応法などを知っておくことが重要ということです。

副業・兼業に関するガイドラインが改定されている

2018年1月、厚生労働省は「副業・兼業の促進に関するガイドライン」を策定し、そして2020年9月にはその改訂版が公表されました。これは副業・兼業を希望する声が増えていた当時に、「働き方改革」のうちの一つとして実現されたことです。

そして、各種企業が就業規則を作る際に基準として活用されている「モデル就業規則」から「許可なく他の会社等の業務に従事しないこと」という一文が削除されるとともに、新たに副業・兼業の自由を認めるという規定が追加されることとなりました。

フリーランスの副業・兼業には要注意

2018年より正式に解禁され、徐々に認めている企業も増えてきている副業・兼業ですが、同時に、フリーランスとしての仕事はその副業・兼業に含まれないということも覚えておく必要があります

本業とは別に行っている仕事が正式に副業・兼業として認められなければ、ガイドラインの適用外となり、副業・兼業分の適切な社会保険を受けられなくなるだけではなく、場合によっては「独占禁止法」に抵触するなど、フリーランスならではの問題が発生することもあるのです。

副業・兼業推進のために法律も改正されている

副業・兼業は環境整備のため、年々さまざまな法改正が行われています。中には未だ状況改善に繋がる法改正が進められておらず、辛い立場のままでいる副業・兼業者の方もいるかもしれません。しかし、法改正は着実に進められているため、過去の情報だけを頼りにせず、常に新しい情報を仕入れるよう努める事が重要です。そのため、これから副業・兼業を行おうと考えている方も、常に副業・兼業にまつわる最新の情報を把握しておくようにしましょう。

2018年には「モデル就業規則」が改正された

2017年に決定された「働き方改革実行計画」により、副業・兼業の解禁を始めとするさまざまな環境整備が行われました。そのうちの一つが、先ほど解説した「モデル就業規則」です。2018年1月には「モデル就業規則」が改定され、副業・兼業が認められるようになりました。

しかし、ここで忘れてはならないのは、変更されたのはあくまで「モデル就業規則」であり、日本中全ての企業がそのモデルに倣って同じように一斉に副業・兼業を解禁したわけではないということです。これから副業・兼業をしようと考えている方は、必ずその会社の就業規則などを確認し、副業・兼業が許可されているかどうかを確認しなければいけません。

また、経営者の方は、副業・兼業が解禁されたからといって、現状では必ずどの会社も副業・兼業を解禁しなければならないということではないため、それぞれの会社の事情にあわせて副業・兼業制度の採用を考えるようにしましょう。

2020年9月には副業・兼業者に対する労災保険法が改正された

副業・兼業に関する法改正のうちの一つに、2020年9月1日に改正された「労働者災害補償保険法」があります。これは、施行日である2020年9月1日以降に従業員の方が病気や怪我などの労働災害が発生した場合、労災保険として支払われる金額が勤務先一つだけではなく全ての勤務先での賃金額を基準として計算されるようになるというものです。つまり、それまでは労働災害が発生した場合に1社分の給与額をもとに支払われていた給付金額が、改正後はその人の全ての勤務先の収入合計額に応じて上がるということになります。

また、従来の労働災害は、それぞれの勤務先ごとに労働時間や勤務内容を評価して判断されていましたが、改正後は1つの職場だけではなく、複数にわたる事業場全てでのストレス及び副業・兼業という実情などを総合的に考慮して、労働災害かどうかが判断されるようになりました。

2022年からは副業・兼業者に対する改正された雇用保険法が施行される

そして、2022年4月1日からは雇用保険法が一部改正され、65歳以上の高年齢被保険者を対象とする特例が施行される予定となっております。

この特例は、それまで1事業所につき週20時間以上働いている従業員のみが雇用保険の被保険者として認められていたものが、法改正後は、全ての勤務先の労働合計時間が週20時間以上になった65歳以上の方も雇用保険の適用対象として認められるようになる、というものです。つまり、65歳以上の方に限りますが、以前よりも雇用保険の適用範囲が広がったということであり、高齢者の方がより働きやすい社会に変わっていくということです。

ただ、この特例で雇用保険の被保険者になるためには、対象となっている方が公共職業安定所で専用の届出を行う必要があるため、条件を満たせば自動的に被保険者になれるわけではないということも覚えておいてください。

副業・兼業のメリット・デメリット

近年になってようやく解禁され、年々法改正が進められている副業・兼業ですが、2021年現在でもまだ副業・兼業を解禁していない企業は数多く存在します。副業・兼業とは企業側・従業員側のどちらにとってもメリット・デメリットがあるため、大多数の企業ではそんな簡単には制度を変えられないのです。

では、そんな企業側・従業員側にとっての副業・兼業のメリット・デメリットにはどういったものがあるのか、解説いたします。

企業側のメリット

まず副業・兼業を許可することによる企業側のメリットですが、これには「従業員の成長」や「優秀な従業員の離職防止」など、人事面におけるメリットが挙げられます。

副業・兼業を始める従業員が増えれば、その会社で培っている技術以外にもさまざまな技術を身に付けることができ、スキルアップや成長に繋がり、結果的に会社にとってもプラスとなり得るため、これはメリットと言えるでしょう。

また、副業・兼業を許可することで収入面における不安を取り除くことができ、収入に不満があるから会社を辞めるという事態の回避、及び優秀な従業員の流出を防止することもできます。

従業員側のメリット

次に副業・兼業が許可されることによる従業員側のメリットですが、純粋な「収入の増加」や将来を見越した「キャリア形成」などが挙げられます。

「収入の増加」は言うまでもなく、副業・兼業をすることで新たな収入源が確保できるということです。

そして、本業とは別の副業・兼業ができるようになれば、本業とは異なる自分のやりたいことの実現、また将来的になりたい理想像のためのスキルアップや事前準備なども可能になります

企業側のデメリット

副業・兼業を許可することによる企業側のデメリットとしては、「情報漏洩」や「過重労働の危険性」などが考えられます。

企業には機密情報が多く、副業・兼業を許可すれば以前よりも機密情報漏洩の可能性が高まってしまうのは避けられません。そのため、副業・兼業を許可する際には、機密情報の取り扱いや秘密保持などについて、最新の注意を払う必要があると言えます。

また2社以上にもわたって仕事を行うと、その分疲労を蓄積し、過重労働に繋がりかねません。しかし、これは個々人の裁量で避けることができる事態であるため、副業・兼業を許可する際には労働時間の管理などを徹底することが重要です。

従業員側のデメリット

副業・兼業を行うことによる従業員側のデメリットとしては、「疲労の蓄積」や「機密情報への注意」、「健康・労働時間管理」などが考えられます。

先ほども解説したように、副業・兼業を実際に行うとなると、情報漏洩には最新の注意を払わなければなりません。それも、どの情報が他社に有利に働くかわからないため、迂闊に他社に自社のことを話すのは現金とすら言えるでしょう。

また、副業・兼業を始めれば、当然その分の疲労も増えることになりますが、その際に自身の労働時間や健康状況をきちんと管理する必要もでてくるため、人によってはそういった面がデメリットになることもあります。

公務員の副業・兼業について

2018年の働き方改革より、現在の日本では副業・兼業を認める風潮が広がりつつありますが、公務員に関しては未だ全面的に副業・兼業が許可されているわけではありません。

国家公務員は国家公務員法第103条によって、地方公務員は地方公務員法第38条によって、それぞれ副業・兼業を制限されています。しかし、近年では法改正による環境整備など、公務員の副業・兼業の自由化が徐々に推し進められているのも事実です。

そこで、2021年現在における公務員の副業・兼業事情について解説いたします。

公務員は「公益的活動」でのみ副業が可能となっている

公務員といっても、国家公務員と地方公務員で副業・兼業に関する制度は異なっているため、それらを混同して考えないよう注意が必要です。

まず、国家公務員ですが、先ほど解説したように以前まで国家公務員は法律によって副業を制限されていましたが、2019年3月に国家公務員の副業・兼業に関するガイドラインが公開され、「公益的活動」に限り、国家公務員も副業・兼業が解禁されました。

そして地方公務員も法律によって副業を制限されていましたが、2019年11月に新たな副業・兼業に関するガイドラインが公表されており、地域振興などの公益的目的の副業であれば副業・兼業の許可を貰える場合が多くなりました。

一部では副業・兼業を推進している地方自治体も存在する

先ほど2019年より国家公務員・地方公務員の副業・兼業解禁が進められつつあると解説しましたが、実はガイドラインが公開される前から公務員の副業解禁を推し進めていた地方自治体も存在するのです。

兵庫県神戸市や奈良県の生駒市などは2017年から地域貢献を目的とした副業を一部認めていることでも知られています。

このように既に公務員の副業・兼業自由化に向けて動いている地方自治体もあるため、今後はより広い範囲で公務員の副業・兼業が認可されるようになっていくかもしれません

副業・兼業者に対する対応法と今後の展開について

ここまで、近年の副業・兼業に関する法改正などについて解説いたしましたが、では副業・兼業の需要が高まっていくと予想されるこれからの社会において、経営者はどのように対応すべきなのでしょうか。

仮に、副業・兼業を解禁したとしても、解禁すればいいというものではなく、副業・兼業者の労働時間管理や健康管理など、多くのことに対応しなくてはならないため、注意が必要です。

副業・兼業者の労働時間管理について

当然の話ですが、本業の他に副業・兼業を行っている方は本業だけ行っている方よりも疲労が蓄積されていきます。勿論個人が自分の体調管理を行うことは重要ですが、従業員の副業・兼業を認めた経営者は、その副業・兼業分の労働時間も考慮に入れた上で、従業員の労働時間を管理しなければなりません。

そのため、自社に副業・兼業制度を導入した経営者は、就業規則や労働時間体制を見直すなどの対応が必要です。

企業ごとの副業・兼業の禁止・制限について

日本政府の方針として一般企業の副業・兼業が解禁されたとはいえ、現在でも副業を禁止・制限している企業はまだまだ多いのが実情です。

しかし、その一方で「日産自動車」「パナソニック」「ソフトバンク」など数多くの大企業も副業・兼業を解禁しています。

副業・兼業を解禁できるかどうかに企業規模などはほとんど関係なく、いずれの企業もそれぞれの事情にあわせて副業・兼業の解禁が進めているため、これから副業・兼業の解禁をしようかと考えている経営者の方は、焦らず、専門家との相談の上、慎重に進めましょう。

今後、副業・兼業に対する関心はさらに高まっていくと予想されている

2018年の副業・兼業解禁を皮切りに、副業・兼業に関する法改正が年々進み、今では数々の大企業も副業・兼業を解禁しています。また、今現在で副業・兼業に関心があると主張している方も多く、今後、副業・兼業がより推進されれば、さらに副業・兼業に興味を持つ方も増えていくでしょう。

これからの社会において副業・兼業の需要が高まるということを考えると、経営者の方は、自社で副業・兼業を解禁するかしないかに関わらず、副業・兼業を望んでいる従業員に対する対応方法をきちんと考えておくべきかもしれません

副業・兼業についての対応のことならロームにご相談ください

2020年の労災保険法改正や2022年の雇用保険法改正など、副業・兼業にまつわる法改正が進んでいる昨今では、副業・兼業の需要がますます高まっています。皆様の中にも副業・兼業の扱いついて悩まれている方がいらっしゃるかもしれません。

社会保険労務士法人ロームでは人事労務などさまざまなサポートを行っています。ロームにご相談いただければ、副業・兼業に関する悩みを解決するお手伝いをさせていただきます。

副業・兼業を希望している従業員が働きやすい環境作りを実施したいと考えている経営者さまもぜひお気軽にお問い合わせください。

90分間無料相談

一覧ページに戻る

全国からお問い合わせ受付しております!

お急ぎの場合には、お電話にてご連絡ください。
「ホームページを見て電話しました」とお伝え頂くと助かります。
もし、お悩みのことがあるならスグにお電話ください。トラブルや問題解決は早い程、効果的です。

  • 0120-606-241 受付時間:10:00〜18:00(土日祝除く)

    個人の方からの相談は受け付けておりません

  • 90分間無料相談
業務拡大につき積極採用中! 90分間無料相談受付中