社会保険労務士法人 ロームのお役立ち情報

2021.12.10

過労死認定基準とは?20年ぶりに改正された変更点などについて解説!

2021年9月14日に、20年ぶりに過労死認定基準が改正されたことで、驚かれている経営者の方も少なくはないでしょう。ここでは、今回の過労死認定基準改正によって具体的に何がどう変わったのかといったことについて解説いたします。

労働環境の改善に取り組みたい、今回の改正による影響について知りたいという社長さまはぜひ参考にしてみてください。

過労死認定基準とは

 過労死認定基準とは、被保険者が病気にかかったり怪我を負ったりした際に「労災保険」から給付金が支払われるかどうかの基準のことです。つまり、仕事中に怪我や病気で倒れても、この基準を満たさない限りは労災と認められないという労働時間などの基準値のことを指しています

2021年9月14日、約20年ぶりに過労死認定基準が改正された

これまで過労死認定基準とされていたものは、2001年に改正された「脳血管疾患及び虚血性心疾患等の認定基準」でしたが、今回、約20年ぶりとなる2021年9月14日に、最新の医学面などを考慮した新しい改正法「血管病変等を著しく増悪させる業務による脳血管疾患及び虚血性心疾患等の認定基準」が施行されることとなりました。

では従来の過労死認定基準と改正法では何がどう異なっているのか、何が新しく追加されたのかといったことについて、これから解説させていただきます。

過労死認定基準における「労働時間」と「時間外労働」

まず、過労死認定基準における「労働時間」ですが、病気が発症する1ヶ月前に100時間以上あるいは2~6ヶ月間の間に平均で月80時間以上働いている場合、その病気は仕事によるものである可能性が高くなるとされています。

重要なのは、この過労死認定基準において目安となる労働時間そのものは変わっていないということです。何十時間からが労働時間の過剰になるのかという数値の基準に変わりはないものの、その時間以上の場合は勿論、その時間に満たなくとも他のことが負担となっていた場合も労災と認められるようになりました。

過労死ラインとは

また、この「発症前1ヵ月間におおむね100時間」あるいは「発症前の2か月間ないし6か月間にわたって、1か月当たりおおむね80時間」という労働時間の目安は「過労死ライン」とも呼ばれています。

しかし、過労死ラインはあくまで病気を発症した際に仕事との因果関係が認められやすくなるという基準であり、それを超えると全て労災認定されるというわけではないことも覚えておく必要があるでしょう。

また、病気の発症前6ヶ月間の間の平均時間外労働時間が45時間を超えると労災認定されやすくなる一方で、45時間未満の場合は認められにくくなるとされています。

過労死ライン未満の労働時間でも過労死認定されるように

今回の法改正によって変わった過労死認定基準のうちの一つは、労働時間が過労死ラインを下回っている場合でも、心理的負荷や劣悪な作業環境など労働時間以外の負担も考慮して労災と認定される場合が増えたということです。

以前までは過労死ラインばかりが重要視されて、労働内容はあまり重視されていませんでしたが、法改正後は、業務量や業務内容、作業環境などの要因も考慮に入れ、総合的に判断されることとなりました。

「労働時間外の負荷要因」も重視されるように

労災認定の判断の際に重要視されるようになったのは労働内容に関係したことだけではありません。

労働時間の他に、「事業場外における移動を伴う業務」、「勤務間インターバルが短い勤務」、「休日のない連続勤務」、「身体的負荷を伴う業務」などの負担も労災認定の判断材料と見做されるようになりました。

では、それぞれどういったことを基準に判断されるのか解説いたします。

休日のない連続勤務

勤務日と勤務日の間の休日が少ない場合などの連続勤務では、実労働時間や連続勤務日数、休日の数などが判断材料となり、それらが病気の発症に関わっているかどうかが重要となってきます。

勤務間インターバルが短い勤務

退勤してから次の日に出勤するまでのインターバルが11時間未満かどうか、またそういった事態がどれくらいの頻度で起きているのかなどといったことが過重業務になっているかどうかの判断材料と見做されます。

身体的負荷を伴う業務

そして、この「身体的負荷を伴う業務」が2021年9月の法改正で新しく追加された項目であり、重量物の運搬などの力のいる作業や肉体的な負担が大きい業務が課せられていないかどうか、また、事務職が日頃から肉体労働をさせられていないかといったことも判断材料として検討されるようになりました。

事業場外における移動を伴う業務

さらに、職場外への移動頻度や出張期間、移動距離、移動時間など「移動を伴う業務」も新しく過労死認定基準の判断材料の一つとして追加されました。

以前までは、過労死認定基準でも「出張の多い業務」であるかどうかは判断材料となっていましたが、今回の法改正では出張先の種類、出張先での休息状況など、それまで不明瞭だった判断基準が明確化されることとなりました。

業務と病気の発症が強く関連していると判断されるケース

病気や怪我と仕事が強く関連しているかどうかを判断する際に基準となる判断材料には様々なものがあります。

今回の法改正では、業務と病気が関係していると判断されるケースの例として、従来までの「長期間の過重業務」だけでなく、「短期間の過重業務」や労働時間を問わず発生する事故やトラブルといった「異常な出来事」も新しく過労死認定基準に追加されることとなりました

「長期間の過重業務」における場合

「長期間の過重業務」とは、病気発症前の月の労働時間が100時間を超えているなど、先ほど解説した過労死ラインを超えて働いている場合を指します。

また、今回の法改正で過労死ラインを超えておらずとも労災認定される場合が増えたため、「長期間の過重業務」に該当する方は今後ますます増えていくでしょう。

「短期間の過重業務」における場合

「短期間の過重業務」とは、病気の発症直前から前日までの間に過度の長時間労働をしていたり、発症前の1週間ほどの間、連続して深夜遅くまで残業をしていたりと、発症前の短期間に集中的な過重労働が行われている場合を指します。

「短期間の過重業務」という判断基準が追加されたことで、前月に100時間も働いていない場合でも、労災認定される可能性が高まったと言えるでしょう。

「異常な出来事」における場合

「異常な出来事」とは、業務に関わる重大な事故に関与した場合や、生命の危険を感じさせるような事故や対人トラブルなどに関与した場合など、その出来事によって急激な血圧変動や血管収縮等を引き起こすことが医学的にみて妥当と認められる出来事を指します。

つまり、仕事中に事故に遭遇したり、熱中症になっても仕方がないほどの環境下での労働を強いられたりすることが「異常な出来事」に該当するということです。

過労死認定基準の対象疾病とは

過労死認定基準では、主に脳血管疾患と虚血性心疾患という、「脳」と「心臓疾患」が対象の疾病となっています。

なお、発症前に先述した「長期間の過重業務」または「短期間の過重業務」に携わっていたか、あるいは「異常な出来事」に遭遇して発症した方が対象となっており、仕事に関わりのない疾病では労災と認められないため、注意が必要です

脳血管疾患

脳血管疾患とは脳血管に異常が発生することで起こる、脳疾患の総称のことです。具体的には、脳内出血、くも膜下出血、脳梗塞、高血圧性脳症が過労死認定基準の対象疾病とされています。

くも膜下出血や脳梗塞などはまとめて脳卒中と呼ばれることも多く、これらの前兆としては、めまいや立ちくらみ、顔や手足の片側麻痺、目の焦点が合わなくなるなどがあるため、少しでも不安に思ったらすぐに病院で診てもらうようにしましょう。

虚血性心疾患等

虚血性心疾患とは、心臓に充分な血がいきわたらないことで起こる心疾患の総称です。具体的には心筋梗塞、狭心症、大動脈解離、重篤な心不全、心停止が過労死認定基準の対象疾病とされています。

これらの前兆としては、胸を圧迫するような痛み、吐き気や冷や汗、呼吸困難や息切れなどがあるため、少しでも不安に思ったらすぐに病院で診てもらうようにしましょう。

過労死認定基準の対象疾病に「重篤な心不全」が追加

そして、2021年9月の法改正により、虚血性心疾患のうちの一つとして新たに「重篤な心不全」が認定基準の対象疾病に追加されました。

これは、以前まで「心停止」に含まれていた「不整脈が原因の心不全等」が分離して記載されるようになったということであり、よりわかりやすくするための表記変更によるものです。

過労死を起こさせないために経営者ができること

近年では過労死が社会問題になっているということもあり、とうとう過労死認定基準も約20年ぶりに改正されることとなりました。

従業員が過労死など起こさないようにするため、経営者が職場の環境改善に務めなければならないのは当然のことです。しかし、時には従業員が仕事に起因する病にかかってしまうこともあるかもしれません。そんな時に、これまで通りの労働環境のままでいると、過労死認定基準が緩和されたことにより、以前よりも労災認定される確立が上がってしまいます。

そのため、今後の会社のためにも、従業員のためにも、残業時間や時間外労働時間など、労働環境を見直した方がいいのではないでしょうか。

ストレスチェックの実施や勤務体制の見直しなど

労働環境の改善も重要ですが、従業員への気配りも忘れてはなりません。

ご存知の方も多いかと思いますが、労働安全衛生法により、労働者が50人以上の会社では定期的なストレスチェックが義務になっています。そこで、従業員数50人未満の会社も率先してそういったストレスチェックなどを行って労働者の心身の状態を確認してみるのはいかがでしょうか

現在ではリモートワークの普及により、会社によっては自宅での仕事も可能となっていますが、労働時間の管理が自宅でも徹底されているとは限りません。そういった、管理の目が行き届いていないかもしれない従業員も、労働時間や業務内容が過剰にならないよう配慮することが重要です

専門家への相談

過労死認定基準が緩和され、自社の労働環境は大丈夫だろうかと不安に思われる経営者の方も少なくはないと思います。そういった方はまず、保険スタッフなどの専門家に相談するといいでしょう。そして、専門家との相談の上で、環境改善などその後の対応方法を考えていくようにしましょう。

過労死認定基準のことならロームにご相談ください

2021年9月の過労死認定基準改正により、経営者の方は今後さらなる労働環境改善に務めなければなりません。現状に不安を覚えている経営者の方は保険スタッフや社会保険労務士などに悩みを打ち明けてみるといいかもしれません。問題が深刻であればあるほど、専門家に相談するのが賢明と言えるのではないでしょうか。

社会保険労務士法人ロームでは人事労務などさまざまなサポートを行っています。ロームにご相談いただければ、労働環境改善などの悩みを解決するお手伝いをさせていただきます。

従業員が安心して働ける環境作りを実施したいと考えている経営者さまはぜひお気軽にお問い合わせください。

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