社会保険労務士法人 ロームのお役立ち情報

2021.12.10

2022年10月、社保適用拡大!パート雇用がガラッと変わる!

2022年10月に施行される社会保険適用拡大に伴い、これまで社会保険の適用外だったパートタイマーなども新たに加入対象となる可能性があります。そこで今回は、社会保険適用拡大のポイントや、与える影響、また企業ではどのように対応を行えばいいかを紹介します。

社保適用拡大に上手く対応できるか不安な経営者の方はぜひご参考ください。

社保適用拡大(2022年10月~)のポイント

2022年10月から社会保険の適用が拡大されますが、実は従業員500人を超える企業ではすでに適用されており、これがさらに拡大されるのが特徴です。今回対象となるのは従業員数が50人を超えており(51人以上)500人以下の会社ですが、50人以下にも今後適用されていく予定となっています。

では対象となる会社の詳細な情報や、対象となる従業員の具体的な要件について見ていきましょう。

従業員数500人以下にも拡大

日本で問題視されている少子高齢化や、女性を中心とする労働者の多様化などに合わせて年金制度の改正法が成立、これと並行して社会保険の対象拡大も行われました。元々従業員が一定数を超える場合は、短時間労働者(パート・アルバイトなど)も社会保険に加入する必要がありましたが、今回はこの範囲が拡大されます。

現在は500人超の企業が対象ですが、2020年10月以降は従業員が100人超え(101人以上)の企業も対象となります。またこの範囲は今後も更なる拡大が予定されており、2024年10月からは従業員50人超え(51人以上)の企業にも適用されます。

従業員の要件が拡大

現在の要件では正規従業員とフルタイム従業員のほか、週の労働時間と月の労働日数が正規従業員の4分の3(30時間)以上の短時間労働者が対象です。

しかし新たに拡大されたものによれば、4分の3(30時間)未満のパート・アルバイトであっても、次の4つの要件全てに該当する場合は被保険者になります。

  • 週の労働時間が20時間以上
  • 雇用期間が2ヵ月超と見込まれている
  • 賃金の月の金額が8万8,000円(年収では106万円以上)
  • 学生ではない

なお賃金月額に関しては、時間外労働手当や休日・深夜手当、通勤手当などの手当は含まれないため注意しましょう。

「雇用期間1年以上」の要件が撤廃

この4つの要件の中で大きく変更となっているものとしては雇用期間が挙げられます。現在の要件では雇用期間は1年以上である必要がありましたが、これがなくなりフルタイムの従業員と同様雇用期間2ヵ月超となり、より幅広い人が社会保険を利用できるようになります

また雇用期間が2ヵ月以内だったとしても、実態として2ヵ月を超えて業務を行う見込みがあれば、雇用期間が開始された日からさかのぼって雇用対象とすることが可能です。そのほか雇用契約書で更新が明言されている、または同じ雇用契約の従業員が、更新などで契約間を超えて雇用された実績があれば適用を受けられます。

社保適用拡大で押さえておきたい知識

次に社会保険の適用拡大に対応するために押さえておきたい知識を紹介します。主なポイントは以下の通りです。

  • 短時間労働者の定義
  • 従業員の数え方
  • 従業員の数を判断するタイミング

特に下2つはやり方によって、自社が2022年10月からの社会保険適用拡大に該当するかどうかが変わってしまうため、しっかり押さえておきましょう。

短時間労働者の定義

パートタイム労働法に記されているところによれば、短時間労働者とは1週間あたりの労働時間が同じ事業者に雇用される通常の労働者の労働時間よりも短い者と決められています。この通常の労働者とは、正規雇用者やフルタイム労働者を指し、これより短いと短時間労働者と呼ばれます。

前述したように、パートやアルバイトが主な対象者ですがそのほかにも嘱託や契約社員、臨時社員、準社員なども通常労働者より労働時間が短ければ短時間労働者と判断されます。

従業員数の数え方と判断のタイミング

通常従業員の数というと、企業で雇用されているすべての労働者がイメージされますが、社会保険への適用を考える場合は労働者数ではなく「社会保険の被保険者」の数を数えます。なおこの被保険者は現行の要件に該当する従業員のみであり、2022年から拡大される要件に該当する対象者は含める必要はありません

また事業所ごとではなく、法人単位で従業員数を合計することも大切です。なお繁忙期と閑散期の関係などで従業員数が変動する場合は、直近12ヵ月のうち6ヵ月で定められた基準を上回った場合は適用の対象となります。

社保適用拡大に向けた社内準備の方法

上記の定義や従業員の数え方を照らし合わせた結果、今回の社会保険適用拡大に自社が該当するのであれば、改正法施行の前に準備を進める必要があります。主な準備は以下の3つの工程に分かれます。

  • 改めて加入対象者を把握する
  • 説明会による周知や個人面談の実施
  • 各種手続きの実施

では次の項目で詳しく見ていきましょう。

改めて加入対象者を把握する

まずは、現行で社会保険の対象者となっている従業員のほか、今回の適用拡大に該当する従業員がどの程度いるかを改めて確認します。繰り返しになりますが、拡大された従業員の要件は以下の通りです。

  • 週の労働時間が20時間以上
  • 雇用期間が2ヵ月超と見込まれている
  • 賃金の月の金額が8万8,000円(年収では106万円以上)
  • 学生ではない

なお、契約上労働時間が20時間に満たない場合であっても残業時間と合わせて実労働時間が2ヵ月連続週20時間以上となると、雇用3ヵ月目から社会保険に加入しなければいけないいけないため注意が必要です

説明会による周知や個人面談の実施

次にメールや社内イントラなどを活用し、確実に対象者へ伝達できる方法で通知し、説明会や個人面談を実施します。説明会や個人面談で伝えるのは社会保険の対象者となったこと、また社会保険の加入メリットなどです。

この加入メリットについては後程紹介しますので、そちらも合わせてご参考ください。またこの時加入を希望するのであれば労働時間の延長や正社員への転換、加入を希望しないのであれば働き方の見直しなどについても話し合うといいでしょう。企業側は必要があれば人員の配置転換などを検討します。

各種手続きの実施

今回の適用拡大に該当する企業であれば、2022年8月までに日本年金機構から通知書類が届けられます。企業はこの届出に従って必要な書類を作成し、2022年10月5日までに申請を行いましょう。

なお新たに社会保険の対象となる従業員はそれぞれ「被保険者資格取得届」を提出する必要があり、これらはオンラインからも提出することが可能です。もし準備を進める上で分からないことがあれば、社労士法人のロームなど専門家に相談すると安心して進められるでしょう。

短時間労働者が社会保険を受けるメリット

社会保険適用拡大に伴い新たに対象となる短時間労働者に対しては、個人面談などを行い社会保険に加入するかどうかを選択してもらいます。

この時社会保険に加入するメリットを紹介しますが、具体的にどのようなメリットがあるかよく分からない方も多いのではないでしょうか。そこで次に短時間労働者が社会保険を受けるメリットを紹介します。

受け取れる年金が増える

年金は受給資格期間を満たしていれば65歳以上の全員が受け取れる老齢基礎年金がありますが、社会保険に加入することで老齢厚生年金が上乗せになり、年金の受給額を増やすことが可能です。

また基礎年金にはほかにも怪我や病気による障害を負うと受け取れる障害年金、被保険者が亡くなった場合に遺族が受け取れる遺族年金がありますが、こちらも同様に厚生年金を上乗せでき、傷害年金では保障の範囲も広がります

医療保険が充実する

社会保険に加入すると、傷病手当金や出産手当金が受け取れます。傷病手当金とは療養のため働けなくなった場合に、給与の3分の2相当を支給してもらえる手当であり、最長1年6ヵ月間支給してもらうことが可能です。

また出産手当金は被保険者が出産のために会社を休み給与がもらえなくなった場合、同様に給与の3分の2相当を支給してもらえる手当です。期間は産前42日、産後56日までの間支給されます。

企業が社保適用拡大から受ける影響

ここまで従業員が社会保険に加入するメリットを紹介しましたが、もちろん企業が今回社会保険適用拡大から受ける影響も大きく、メリット・デメリットが存在します。メリットは助成金・補助金が受け取りやすくなることと求人力のアップであり、デメリットは社会保険料の負担増加です。では次の項目で詳しく見ていきましょう。

社会保険料負担の増加

基本的に社会保険料は企業が半分を負担するため、その分の社会保険料負担が増加します。厚生労働省によれば、今回の適用拡大に伴い1人あたり年約24万5,000円、40~65歳であればそこからさらに約1万5,000円が増加すると言われています。

特に飲食業界や小売業界など、短時間労働者が多く新型コロナウイルスの影響を大きく受けた業界にとっては大きな負担となるでしょう。そのため労働条件や労働時間の変更など長期的な視点での再考は早めに検討を始めるのがおすすめです。

社保完備による求人力のアップ

厚生労働省が「社会保険に加入できる求人」についてどう思うかをアンケート調査したところ、「魅力的」と回答した人は約60%にものぼっています。実際社会保険への加入は、デメリットよりもメリットの方が大きく、特に将来受け取れる年金が増えることは大きなメリットです。

このことから、求人募集を行う際に社保完備をアピールしすることで、より人を集めやすくなると言えるでしょう。

助成金・補助金が優先的に受け取れる

社会保険の適用拡大は、期日前に実施(選択的適用拡大)することで助成金が受け取れ、補助金も優先的に受け取ることが可能です。「キャリアアップ助成金」は従業員のキャリアアップに対する取り組みに対して支給されるもので、選択的適用拡大を実施する企業を対象としたコースがあります。

これは社会保険労務士などの専門家を活用して適用拡大を行えば19万円がもらえ、そのほか一定の要件を満たせば金額を増やすことも可能です。また「ものづくり補助金」「持続化補助金」「IT導入補助金」は、補助を受ける際に審査を受ける必要がありますが、選択的適用拡大を行った企業に関しては応募要件が緩和され、審査の加点項目になるなど優先的に補助金が受けられるようになっています。

補助金の金額は「持続化補助金」が最大50万円、「IT導入補助金」が最大450万円、「ものづくり補助金」が最大1,000万円となっているため、これらが支援されやすくなるのは企業にとって大きな助けとなるでしょう

社会保険や助成金・補助金の相談はロームにご相談ください

今回は2022年10月に施行される社会保険適用拡大の主なポイントと、それに伴う社内での準備方法などを紹介しました。適用拡大に向けた準備では、新たに対象となる従業員全員への対応が必要となり、また期日前に実施することで助成金なども受け取れるため早めに準備を進めましょう。

社会保険適用拡大の準備に不安を感じている社長さまは、「人」と「経営」の悩みを幅広くサポートする社会保険労務士法人ロームにぜひご相談ください。

 

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