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2021.09.29

選択制DC(選択制企業型確定拠出年金)のメリットとデメリット、導入時の注意点を解説

企業が導入できる年金制度にはさまざまな種類があり、選択制DC(選択制企業型確定拠出年金)もそのひとつです。従業員は給料として今受け取るか年金で将来もらうか選択でき、社会保険料負担が減るなど企業にとっても従業員にとってもメリットがあります。

今回は選択制DCのメリットやデメリット、導入時の注意点を解説するので、選択制DCがどのような制度なのかを確認して導入を積極的に検討してみてください。

選択制DC(選択制企業型確定拠出年金)とは?

選択制DC(選択制企業型確定拠出年金)は給与の一部を原資として使い、掛金を拠出して将来年金で受け取るか今までと同じく給料として受け取るか、従業員が選択する制度です。

例えば従業員の月給が25万円の企業で選択制DCを導入し、最大2万円まで掛金を拠出できるようにした場合、従業員は掛金として2万円拠出して現在は月給23万円を受け取ることもできますし、掛金は拠出せず今まで通り月給25万円を受け取ることもできます。

福利厚生のひとつとして役立つのはもちろんのこと、従業員がライフプランや各自の考え方にあわせて選択できるようになり、老後に備えるための選択肢の幅を広げられる点が選択制DCの特徴です。また企業が費用負担を抑えながら年金制度を導入できる点も特徴のひとつで、通常の企業型確定拠出年金のように企業が掛金を拠出する必要はありません。

実際に選択制DCを導入する場合は、労使合意により給与等を減額して給与の一部をライフプラン手当などと再定義し、企業型年金の個人別管理資産として積み立てるか給与への上乗せで受け取るか、各従業員が選択することになります。

選択制DCを導入するメリット

選択制DCを導入すれば企業も従業員も社会保険料負担を軽減できるなど、選択制DCは企業・従業員双方にとって多くのメリットがある年金制度です。

福利厚生を充実させれば企業は人材を集めやすくなり、税制上のメリットを活かしながら将来に備えて資産を積み立てれば従業員は老後への不安を解消できます。

ここでは選択制DCのメリットについて紹介するので、メリットを活かせそうな場合は選択制DCの導入を積極的に検討してみましょう。選択制DCについてより詳しく知りたい場合には社会保険労務士法人ロームにお気軽にご相談ください。

メリット1.社会保険料の削減効果がある

健康保険料や厚生年金保険料は従業員の給与額に基づいて保険料額が決まり、企業と従業員がそれぞれ半分ずつ負担します。選択制DCの掛金を拠出した場合、保険料額を計算する際の給与額には含まれないため、選択制DCを導入して掛金を拠出すれば社会保険料を削減できる点がメリットです。

例えば健康保険料率は全国健康保険協会管掌健康保険加入者で介護保険第2号被保険者以外の人は10%前後(※率は都道府県によって異なります)、厚生年金保険料率は18.3%で、両者を合計した率を半分ずつ企業と従業員が負担するため各々が15%程度を負担します。

厳密な削減効果を算出するには細かい計算が必要ですが、選択制DCの掛金額と保険料率を掛け合わせた額が削減できる社会保険料の概算額です。金額として決して小さくなく、企業・従業員双方の社会保険料負担を軽減できる点が選択制DCのメリットといえます。

メリット2.3つの税制メリットがある

選択制DCの掛金を拠出すると拠出時・運用時・受取時の3つのタイミングで税制優遇措置の適用を受けられます。選択制DCは従業員にとって税制上のメリットがある制度です。

  • 拠出時:掛金に所得税や住民税はかからない
  • 運用時:掛金を運用して得た運用益に所得税や住民税はかからない
  • 受取時:年金を受け取るときに所得控除の対象になる

まず選択制DCの掛金は給与とは見なされないため所得税や住民税はかかりません。給与として受け取る場合に比べて税負担を軽減できる点がメリットです

また選択制DCでは拠出した掛金の運用を行いますが、運用益が生じても所得税や住民税はかからず非課税です。一般の金融商品では運用益が生じると税率20.315%で税金がかかるのに対して、選択制DCでは税金がかからない分より多くの資産を手元に残せる点がメリットといえます。

さらに年金を受け取る際に所得控除の対象になり、税負担を軽減できる点もメリットのひとつです。一時金で受け取る場合は退職所得控除の対象に、年金で受け取る場合は公的年金等控除の対象になり、税負担の軽減効果があります。

メリット3.年金2000万円問題の解決策になる

平均寿命が伸びて人生100年時代といわれるようになり、長生きすれば生活費などのお金がより必要になるため老後に不安を抱く人は少なくありません。選択制DCを活用すれば、従業員は働いているときから将来の老後に備えて資金を積み立てることができ、老後に対する不安を解消できる点がメリットです。

例えば2019年6月に金融庁が報告書「高齢社会における資産形成・管理」を発表した際、「老後資金が2000万円不足する」というニュースが話題になりましたが、注目度の高さから老後への備えや老後資金の準備に対して関心を持っている人の多さが伺えました。

老後に備えたい人にとっては資産形成の方法・選択肢がひとつでも多いほうが良く、勤務先で選択制DCが導入されれば、選択の幅が広がり各従業員がそれぞれの事情や考え方に沿って対策を講じやすくなります。

また老後への備えをまだあまり考えていない人でも、勤務先で選択制DCが導入されることをきっかけに老後について考え始める場合があるため、その点でも選択制DCの導入は有益といえるでしょう。老後に向けて必要な知識を身に付けて早めに準備をすることで、老後資金不足の問題を解決できて安心して老後を迎えられます。

メリット4.人手不足対策の福利厚生となる

選択制DCを導入すれば従業員の老後に向けた資産形成をサポートできて福利厚生が充実します。福利厚生が充実している企業のほうが労働者にとって魅力的であり、福利厚生の一環として選択制DCを導入すれば、人材を集めやすくなることが企業にとってメリットです。

一般的に福利厚生を充実させようとすると大きな費用がかかる場合がありますが、選択制DCであればそれほど大きな費用負担は生じません。選択制DCは企業の掛金負担なしに導入できるため、費用負担を抑えながら福利厚生を充実させて人手不足対策として使える点が魅力です。

また選択制DCを導入すると社会保険料の企業負担分を軽減できるため、費用削減によって生まれた資金を福利厚生の充実などに充てて人材の獲得につなげることもできます。

選択制DCを導入するデメリット

選択制DCにはメリットがある一方でデメリットもあるため、選択制DCを導入する場合にはメリットとデメリットの両方を踏まえた検討が必要です。

選択制DCの掛金を拠出すると従業員が将来受け取る厚生年金が減る可能性がある点に注意が必要で、選択制DCの導入により従業員に対する投資教育が必要になって手間がかかるなどデメリットがあります。

デメリット1.老後の年金が減る

選択制DCのメリットのひとつとして社会保険料の削減効果を紹介しましたが、納付する厚生年金保険料が減れば将来受け取る厚生年金が減る場合があります。選択制DCの掛金を拠出すれば将来受け取る年金(確定拠出年金)は増えますが、一方で厚生年金が減ることがある点がデメリットです。

また普段納める社会保険料が減ると、将来受け取る老齢年金だけでなく障害年金や遺族年金、傷病手当金、失業保険の額も減る場合があります。

デメリット2.投資教育が必要

選択制DCの導入後に従業員から「このような制度だとは知らなかった」といわれてトラブルにならないよう、選択制DCを導入する際には従業員に対する投資教育や丁寧な説明が必要になります。そのため企業にとっては、従業員向けに説明会や勉強会を開く手間がかかる点がデメリットのひとつです。

従業員の中にはそもそも年金に関する知識があまりない人もいるため、年金制度全般に関する知識や選択制DCの仕組みなどをわかりやすく丁寧に説明することが求められます。

従業員への投資教育にかける手間を面倒に感じて疎かにすると制度に対する理解が進まず、後々に従業員との間でトラブルが起きてしまい、寧ろトラブル対応の手間が増えることになりかねません。導入前だけでなく導入後も従業員への説明会などを開催してフォローを行い、従業員が選択制DCのメリットを十分に活かせるようサポートを行いましょう。

デメリット3.給与計算、社保手続が面倒

選択制DCを導入した企業では、掛金を拠出した場合の給与明細の項目としてライフプラン手当などの項目を新設する必要があり、掛金を拠出しない従業員も含めて全従業員の給与明細を変更する必要があります。また選択制DCを導入して従業員が掛金を拠出すると、社会保険料の等級が変わり随時改定の対象になることがあり、この場合にも手続きが必要です。

このように選択制DCの導入時には給与計算や社会保険の手続きをしなければならず、手間がかかる点が企業にとってのデメリットのひとつです。

選択制DCの導入を検討する際の注意点

選択制DCを導入する場合、給与の変更を伴うため労使合意を得る必要があります。選択制DCがどのような制度なのか、従業員に対して事前に丁寧に説明するようにしてください。

その際、メリットだけを説明すると誤解を生んで後々にトラブルになる可能性が高いため、デメリットも含めて説明しておくことが大切です。今回解説した選択制DCのメリット・デメリットの両方を従業員にしっかりと説明するようにしましょう。

また企業年金制度の導入にあたっては、自社に最適な制度を選ぶためにさまざまな年金制度を比較する必要があり、選択制DCを導入することに決めた場合には就業規則の変更や社会保険関係の手続きなどが必要になります。年金に関する専門的な知識が必要になるため、企業年金制度の導入をお考えの場合は社労士への相談を検討してみてください。

専門家に依頼すれば費用はかかりますが、必要な手続きを任せられるため負担が減り、従業員向けの説明会や勉強会の講師を社労士に依頼すれば、選択制DCに対する従業員の理解が進んでスムーズに制度を導入できます。

社会保険労務士法人ロームでは選択制DCの導入に向けたサポートを行っていますのでお気軽にご相談ください。

選択制DCの特徴を理解して導入を検討しよう

今回は企業型確定拠出年金のひとつである選択制DCについて解説しました。企業にとっては費用負担を抑えながら年金制度を導入できる点がメリットで、従業員にとっても老後への備えができるなどさまざまなメリットがあります。その一方で選択制DCにはデメリットもあるため、メリットとデメリットの両方を踏まえて検討するようにしましょう。

選択制DCの導入にあたっては、デメリットを軽くしてメリットを増やすためにも、社労士などの専門家に相談することが重要です。社会保険労務士法人ロームでは選択制DCの導入サポートを行っていますので、企業年金制度の導入をお考えの方や選択制DCについて詳しく知りたいという方はお気軽にご相談ください。

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