こんにちは。「人事労務で日本を元気に!!」社会保険労務士の牧野です。
みなさんの会社では、労働基準監督署の調査に当たったことはありますか?
「50年会社をやっているけど、一度も当たったことがないよ」という社長様も多いかと思います。
弊社のお客様の中にも、調査されたことがない会社さんはたくさんあります。
ですが、これまで調査されなかったから、今後も調査されないという保証は残念ながらありません。
「調査が来るかわからないから何もしない」よりも、
「調査が来るかわからないけど、どんな対応をしたらいいのか把握しておく」ほうが
当然、調査が来たときに動揺せず、適切な対応をすることができますよね。
ただ、いざというときのために備えておくことは重要だとわかっていても、体験したことがないと対策を練るのは面倒で億劫です。
今回は、そんな社長様のために、この記事を読むだけで、
具体的な対応方法や監督署調査が来たときの注意点についてご理解いただけるように、わかりやすくご説明します。
1.労働基準監督署の調査と是正勧告の対応法
(1)是正勧告とは
是正勧告とは、労働基準監督官が労働基準法に違反している事案について勧告を行うことです。
- 長時間労働
- 残業代未払い(時間外手当の計算)
- 有給休暇の未消化
- 代休の未消化(休日手当の未払い)
- 就業規則の未作成・非通知
- 雇用契約書
- 賃金の未払い(天引き違反)
- 労使協定書の未提出
- 健康診断未実施
- 最低賃金違反
などがあります。
(2)労働基準監督署の調査が入る4つのケース
①定期監督・呼び出し調査(136,281件80.1% 平成30年度 労働基準監督年報より)
労働基準監督署のあらかじめ決まった年間計画に沿って、調査対象の会社を抽出します。年によって重点課題が異なります。
定期監督については、2パターンあります。
- 事前に電話などで連絡が入るパターン
- 予告なしに立ち入りされるパターン
他にも「呼び出し調査」または「集合監督」と呼ばれる複数の会社を一斉に監督署に呼び出して行う方法があります。監督官の移動時間もなく、一度にたくさんの会社を調査できるので「呼び出し調査」が増えています。
②従業員からの調査依頼やタレコミ(申告監督,20,965件、12.3% 同上)
従業員から労働基準法の違反の申告があった場合に行われます。
この場合も、事前に予告がある場合とない場合があります。
また、指定された日時に労働基準監督署に呼び出されることもあります。
申告した労働者名は、本人の了承がない限り教えてもらえません。
なお、会社はこの申告を行った従業員に、解雇その他不利益な取り扱いをしてはいけません。(労働基準法104条2項)
③再監督(12,946件7.6% 同上)
再監督とは、以下のときに行われる再調査です。
- 是正勧告を受けたのに指定期日までに是正報告書を提出しなかった場合
- 違反が是正されたかを確認するため
最高2回、再監督されたケースがあります。
④労災申請(災害調査)
死亡事故など大きな労働災害が発生した際に、原因究明や再発防止の指導を行うための調査です。
2.労働基準監督署と監督官
(1)労働基準監督署とは
労働基準監督署は、労働基準法、労働安全衛生法などの法令に違反した会社などを取り締まるための機関です。労災保険、労働保険料の手続きなども同時に行っています。
労働基準法に違反している場合に従業員が相談したり、申告したりする先でもあります。
(2)労働基準監督官の権限は?
労働基準監督官(以下、「監督官」)には、労働基準法、労働安全衛生法、最低賃金法などに違反した会社などに調査(臨検)し、危険な機械の使用停止を命令するなど、監督指導する行政監督権限と、強制捜査、逮捕、送検できる特別司法警察職員としての権限を持っています。
かなり強力な権限をもった公務員で、監督官を目指して難関試験に合格した方なので、他の公務員に比べやる気に満ちている方が多いのが特徴です。
3.労働基準監督署の調査の流れ
(1)呼び出し調査と立ち入り調査
①事前の連絡なしに、抜き打ちで始まる場合
監督官が突然、調査しにきた場合でも、拒否することは原則できません。
しかし、担当者や責任者が不在の場合や、急に対応ができない場合は、丁寧に日程を変更してもらうようにお願いすれば、多くの場合は応じてもらえます。
なお、監督官の
- 臨検を拒む
- 妨げる
- 尋問に答えない
- 虚偽の陳述をする
- 帳簿書類を提出しない
- 虚偽の帳簿書類を提出した
この場合、30万円以下の罰金です。(労働基準法第120条)
②「賃金・労働時間等の実態調査」のお知らせと「調査票」が郵送される場合
お知らせには、調査日時や準備しておく書類などが記載されています。帳簿や書類を事前にチェックしておきましょう。
(2)調査前の事前対策と立ち合い
調査前の急場しのぎの対策は、あまり効果的ではありません。できるだけ誠意をもって、丁寧に、正確に対応していきましょう。
とにかく手短に終わらせようと思って、テキパキと準備を進めると調査のスピードを上げて、是正勧告や指導をたくさん受ける場合もあります。
準備の仕方、調査の受け方、対応仕方にはコツがあります。事前に社労士に相談しておくことをお勧めいたします。
監督署の調査に、社労士の立ち合いは原則必要ないと思っています。調査がテキパキ進み、調査範囲が拡がる可能性があります。
社労士が必要になるのは、その後の是正、改善、報告です。
(3)労働基準監督署の調査対象の帳簿など
- 労働者名簿
- 雇用契約書や労働条件通知書
- 会社の組織表など
- 就業規則、賃金規程、その他の規則類
- 時間外労働・休日労働に関する協定届(「36協定」)
- 各種労使協定書(1年単位の変形労働時間制に関する協定、賃金控除に関する協定等)
- 賃金台帳(パート、アルバイトを含む全労働者の直近3ヵ月~1年分程度※1)
- タイムカード、出勤簿、シフト表など
- 年次有給休暇管理簿
- 健康診断の結果、健康診断個人票(医師の意見欄)
- 長期間労働者に対する医師の面談指導記録
- 安全衛生管理体制に関する書類※2
- ストレスチェックの実施に関する記録※2
※1どの位の期間を調査するかは、監督官の裁量です。残業の未払いいいなど従業員からの申告調査の場合は、1年分用意するよう求められることもあります。
※2⑫と⑬とは、労働者50名以上の事業所のみが対象です。
(4)監督官による調査
調査は、おおむね次の順番で進みます。
- 調査表と労働関係帳簿類、勤務実態の確認
- 事業主などへのヒアリング(帳簿類と勤務実態の確認や不明点の確認など)
- 事業場内の立ち入り調査(安全衛生、機械、装置など)※1
- 労働者へのヒアリング(勤務実態の確認)※2
- 口頭による改善指示や指導
※1工場などでは危険がともなう事業所では、高い確率で実施されます。
※2労働者へのヒアリングは、あまり行われません。
(5)是正勧告書・指導票・使用停止命令書の交付
調査の結果、法令違反や改善すべき点が見つかった場合は、監督署から是正勧告や指導を受けます。
監督署の一番の目的は労働者の保護です。労働者に危険が及ぶ可能性があると判断された場合は、法に基づいた指導が行われます。
- 法令違反があれば「是正勧告書」
- 改善すべき点があれば「指導票」
- 施設や設備に不備が認められた場合は、「機器・設備の使用停止等命令書」が交付されます。
(6)是正報告書または改善報告書を提出
是正勧告や指導票を交付された際は、改善期日までに、是正報告書・改善報告書を提出しなければなりません。
是正報告書・改善報告書には、下記内容を正確に記載し、押印して提出する必要があります。
書き方に決まりはありませんが、内容を、正確かつ手短にわかりやすく記載することがコツです。
- 指摘された違反内容
- 是正した内容
- 是正完了日
- 会社名、住所、代表者名
実は、調査の受け方や報告書の書き方より、是正・改善方法にこそ、社労士の知恵・ノウハウが必要です。
根本的な解決をすることで、コストを最小限に抑え、リスクも低減することができます。
人事労務管理のプロである社労士に任せるのが楽です。
4.是正勧告でよく見られる違反内容の事例
(1)未払いの残業代
- 時間外手当を支払っていない場合
- 残業時間に上限を設定し、頭打ちにしている場合
- 割増賃金の計算を間違えている場合(基本給だけ計算など)
- 固定残業手当を超えた分を支払っていない場合
- 深夜の割増賃金を支払っていない場合(管理監督者、パート)
令和元年度に1企業合計100万円以上の未払い残業代の支払いがあった会社は1,611社です。その金額の合計は、98億4068万円に上ります。
これは、1企業100万円以上支払いのあった会社だけの合計金額ですので、100万未満の是正分を含めると額は膨れ上がります。
未払い残業が遡及できる限度は、2020年に時効が延長され最長3年となっています。
しかし、監督署の調査では悪質なケースを除き、3ヵ月、半年または1年といった期間が多いです。期間を指定されずに是正を求められる場合もあります。
遡り期間や金額は、従業員との同意や、改善内容などを監督官とキチンと話すことで、減らしてもらえる場合もあります。
給与計算をノウハウのある社労士に依頼することで、手当の見直し、社会保険料低減、助成金、現物給与などで、アウトソーシング費用を上回るコスト削減も可能です。
(2)就業規則に関する違反
就業規則は、常時10人以上の労働者を使用する本社はもとより、支店・工場・店・営業所ごとに、必ず作成し、労働基準監督署に届出なければなりません。(労基法第89条)
違反で多いのは、以下の事項です。
- 就業規則を作成、届出をしていない(10人以上)
- 変更内容を届出していない
- 労働者代表の意見を聴いていない
- 就業規則を周知していない
- 内容が不足している
なお、就業規則の作成義務に違反した場合や、届出義務に違反した場合は、30万円以下の罰金が科せられます。また、労働条件など就業規則を変更した場合も届出が必要で、怠るとこちらも30万円以下の罰金となります。
実は、就業規則は会社とまじめに働く従業員を守る最強のツールです。20~40ページの薄い就業規則や、作成もしていない会社は、ものすごく損をしています。
不景気の今、従業員を守るためにも就業規則の作成をお勧めします
(3)労働時間に関する違反
労働時間に関する違反が、約18%と最も多いです。
長時間労働は、過労死や精神疾患など健康障害に直結します。
毎年11月には「過重労働解消キャンペーン」が実施され、労働基準監督署の臨検が増えます。
違反で多いのは、
- 長時間労働(「36協定」違反)
- 「時間外・休日労働に関する協定届(36協定)」の未提出
- 「1年単位の変形労働時間の協定届」の未提出
労働時間制度、運用、意識改革、給与体系、評価制度の見直しなどで、労働時間の短縮ができます。
プロに現状を話して、アドバイスを求めると効果的です。
(4)年次有給休暇に関する違反
雇入れの日から6ヵ月間継続勤務し、全労働日の8割以上出社した者に対して、有給休暇を与えなければなりません。
さらに、2019年4月から年10日以上の有給休暇が付与される労働者に対し、年5日については会社側が時季を指定して取得させることが義務づけられています。
- 年次有給休暇を与えていない
- 年次有給休暇の申し出を却下している
- 付与日数が足りない
- パートに有給休暇を与えていない
- 年5日の時季指定をしていない
5.交付された後に行うこと
(1)勧告書と指導票
ここで、役所に対して会社が主張したいことも少なからずあるはずです。
会社の主張をくみ取って、法律に照らし合わせて、論理的に主張を組み立て、行政へきちんと報告・対応をするのが我々専門家の役目であり、私たちがあなたにサポートできることです。
何も知らなければ、言われるがまま。
きちんとした知識があるからこそ、主張もできるわけです。
6.是正勧告に従わない場合の罰則
労働基準法などの違反に対しては、懲役または罰金の罰則が定められています。
重大な法令違反がある場合や悪質な場合(虚偽の報告など)には、検察庁に送検、刑事事件として起訴されることもあります。
ちなみに、虚偽の報告はスグに発覚し、事態を一気に深刻化させます
なお、「是正勧告」は、法令違反に対する行政指導です。「行政指導」なので、強制力はありません。
ただ、是正勧告に従わない場合は、労働基準法などに違反になって、会社が送検され、罰則が適用される可能性あります。
ですから、無視したり放置したりしてはいけません。
優先順位を決めて、誠実に対応していきましょう。
(1)期限に遅れそうな場合
是正勧告書に記載されている期限までに改善できなかった場合には、スグに罰則が適用されるわけではありません。
もし、期限までに改善できそうにない場合は、調査を担当した監督官にスグ連絡して、改善の進捗状況と改善が期限までに完了しない理由を説明しましょう。
その理由に納得ができれば、期限の延長に応じてくれる監督官も意外に多いです。
(2)助成金はどうなるの?
会社経営において魅力的な助成金は、労働法に違反している会社には支給されません。違反している箇所の訂正が求められます。
なお、是正勧告を受けただけならば、助成金は支給されます。
ただし、是正勧告では収まらず、書類送検されると助成金の受給はできません。
助成金をもらうのであれば、キチンと労働関係の諸法令を守らなければいけません。
その方がトラブルに減り、人事労務が安定して、社長さまにとって、ストレスも減って儲かります。
7.ロームの是正報告サポート!
ロームなら、調査前の準備から調査後の改善、報告書の作成、今後の対策までを全面的に会社側の立場になってサポートすることができます。
特にコストを抑えた根本的な対策が得意です。
①調査の事前準備
労基署の調査に対し、社労士と事前に打ち合わせをすることで、調査対応のポイントをつかむことができます。
- 準備すべき書類とチェックのコツ
- 比較的簡単に準備でき、監督官の心象が良くなるポイント
- 調査のときに説明方法など
会社側の立場になって、どのような事前準備が効果的をアドバイスいたします。あまり効果のない場当たり的な対策はアドバイスしませんので、ご安心ください。
②当日の立ち合い(希望者のみ)
調査に立ち合うのが効果かどうかを判断し、ご希望に応じて監督署の調査に立ち会います。原則は、社労士が立ち会う必要はありません。
③監督官への説明
是正勧告、指導で納得できない点やわからない項目があれば、私たちが労基署に連絡し、趣旨を聞き、監督官に説明いたします。
④未払い賃金・残業手当の計算
未払い残業代の計算が複雑で人数が多い場合は、当社で計算を代行いたします。社員によって単価の違う割増賃金を法律に基づいて算出し、素早くご提示いたします。
⑤対策立案
労基署から出された勧告と指導を調査し、原因と改善の方向を決めます。
長時間労働、未払い残業代に対する勧告・指導が出た場合は、会社の現状とご要望にできるだけそった現実的な解決策を提示いたします。
また、今後の余分な残業時間の短縮、残業単価の低減、生産性アップも含めた取り組みも合わせて提案いたします。
⑥報告書作成・提出
・是正報告書の作成と確認
・労働基準監督署へ報告(ご希望があれば同行します。郵送で済むケースもあります。)
8.課題と解決の方向性がスッキリわかるロームの無料相談
監督署の調査、是正報告書の期日までの時間は短いです。
したがって、監督署から「実態調査の案内」、「是正勧告書」が届いたら、スグに電話でご相談することをお薦めいたします。
ロームでは、初回相談無料ですので、お気軽にご相談いただけます。
私たちは、まず徹底的にお客様の状況をヒアリングさせて頂いております。これは、お客様ごとに「状況」が大きく異なるためです。入念なヒアリングによって状況を適切に把握することが最適な解決策や改善方法のご提案に繋がります。
もちろん、守秘義務を遵守いたしますので、ご安心ください。相談したいことがまとまっていない方も、まずはお気軽にご相談ください。お話いただくことで問題が整理されます。
そして、私たちが問題を解決させていただくことで、気持ちが楽になるかと思います。
無料相談では、御社の悩み・問題を整理したマインドマップを無償提供しておりますので、お気軽にご相談ください。
- 働き方改革の推進(粗利アップ)
- 正社員の戦力化
- 人事評価制度の構築
- 就業規則
- 賃金規定
- 雇用契約書
監督署の是正対応に強い社労士によるサポート内容については、「当事務所の8つの特徴」をご覧ください。
9.労働基準監督署の対応に強い「ローム」へのお問い合わせ方法
労働基準監督署の調査に関するご相談は、以下の「電話番号(受付時間9:00〜12:00、13:00~18:00)」にお電話いただくか、メールフォームによるお問い合わせも受け付けておりますので、お気軽にお問い合わせ下さい。
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