社会保険労務士法人 ロームのお役立ち情報

2020.04.27

年次有給休暇管理簿とは? 様式や記載事項などに悩んでいませんか?

こんにちは、社会保険労務士の牧野です。
「年次有給休暇管理簿」とは、会社が“社員の年次有給休暇の取得状況を正しく把握するための帳簿”です。

2019年4月から、「働き方改革関連法」がスタートしました。
「働き方改革関連法」について、新聞等で「残業の上限規制」や「高度プロフェッショナル制度」が話題になったのは記憶に新しいと思います。
しかし、地味ではありますが、「年次有給休暇の5日の取得義務」と合わせ「年次有給休暇管理簿の作成」も下記のように法律の細かな規則として決まりました。
 

労働基準法施行規則第24条の7
使用者は、法第三十九条第五項から第七項までの規定により有給休暇を与えたときは、時季、日数及び基準日(第一基準日及び第二基準日を含む。)を労働者ごとに明らかにした書類(第五十五条の二において「年次有給休暇管理簿」という。)を作成し、当該有給休暇を与えた期間中及び当該期間の満了後三年間保存しなければならない。
そして、この「年次有給休暇管理簿」作成の義務づけは、社員数・業種を問わず、すべての会社が対象です。さらに、有給取得の対象者は正社員・パート・アルバイトすべての従業員です。

「そんなこと言っても忙しくて、そこまでできない」
「とりあえず、年次有給休暇だけ取得させておけばいいでしょ」

このように考える方もいるかもしれません。
確かに、この「年次有給休暇管理簿」は作成しなくても罰則はありません。
しかし、「年次有給休暇管理簿」は必要です。理由を解説していきます。

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年次有給休暇管理簿が、なぜ義務づけられたのか?

「年次有給休暇管理簿」が義務づけられたのは、今回の働き方改革関連法で年次有給休暇の取得が“1年間で最低5日取得”が絶対になったからです。

この義務となった“1年間で5回以上の年次有給休暇取得”が、確実に取得できているかのチェックを、「『年次有給休暇管理簿』がないとできないだろう」ということで、今回、「必ず作らなければならない帳簿」とされたのです。

年次有給休暇管理簿がないことでのデメリットは?


「年次有給休暇管理簿」がないことでのデメリットは6つあります。

❶社員1人1人の、年次有給休暇の取得状況を把握しづらい。
❷3年間以上、年次有給休暇取得のデータ保存が必要なため、途中でよくわからなくなってしまう。
❸そもそも労働基準法違反にあたるので、労働基準監督署に提出を求められたときに困る。
❹年次有給休暇の取得が、正しく把握できず“最低取得回数の5回”に達していない社員がでてしまう。これが原因で、労働基準監督署から指摘をうけ、罰金刑になる。
❺❹の罰金刑は、1人当たり最大で30万円。 例えば、20人の年次有給休暇取得が法律にそってできていないと、20人×30万円で、最高”600万円”の罰金になります。
❻もしものときに困ることがあります。

 例えば、今回の新型コロナウイルスにより休業等余儀なくされた事業者のための「雇用調整助成金」過去1年間に、労働基準法違反があると、助成金の条件に、当てはまっても最悪、受け取れない場合があります。(2020年4月8日現在)
これは、困ってしまいますよね?

以上のようなデメリットから「年次有給休暇管理簿」は、必ず作ることをオススメします。
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年次有給休暇管理簿の様式は?

「年次有給休暇管理簿」の様式に決まったものはありません。
「じゃあ、法律違反にならないように、とりあえず作るだけでいいの?」このように、思うかもしれません。

しかし

・必ず、盛り込まなければならない項目がある。

・労働基準監督署が調査をおこなうときに、提出を求められることがある。

 

このことから、できればわかりやすくシンプルで、監督署にも提出しやすいしっかりとした様式で管理していくのがオススメです。

エクセルで作る?それとも、クラウド導入?もし紙で作ったら?

「年次有給休暇管理簿」は、“エクセルで作成する方法”、“クラウドを導入する方法”または、“紙で作成する方法”があります。
※クラウドとは「インターネット経由で、別の会社のコンピューターのシステムを利用すること」です。

オススメは、エクセルで作成して管理する方法です。それぞれのメリットとデメリットを解説します。

  メリット デメリット

 クラウド

①「年次有給休暇管理簿」の管理する負担が軽減される。
②転記をしなくても、自動で年次有給休暇の付与などができる。
③法律の改正があった場合、その都度バージョンアップされ、法律改正への対応がスムーズになる。
④記入担当者のミスが、発生しにくい
①導入の初期費用や、月額費用がかかる
②会社の外にデータを保存するので、セキュリティーが不安
③ネットワーク障害やサービス会社の倒産等で、サービスが停止する危険がある。
エラーが出た場合、自分の会社だけで対応できない。
インターネットに接続しなければ、利用できない。
⑥それぞれの中小企業用に、カスタマイズしにくい。独自の就業規則などのルールに、対応できないことがある。
⑦一度導入すると、使いにくくてもやめにくい。

 

システムや、ネットワークの影響を受けない。
②ITに不慣れな人にも、使いやすい
メモが自由にできる
①業務効率が悪い
③ 「年次有給休暇管理簿」を、保管しておくスペースが必要になる。
④ 1人の従業員のページを見たい場合、該当ページを探す手間がかかる。
④「年次有給休暇管理簿」は、使用頻度が高いため、“戻し忘れ”や“誤って捨ててしまう”など、紛失のリスクが高い。
 エクセル 費用が、ほとんどかからない。
②「年次有給休暇管理簿」の導入に時間がかからない。
③難しくなく、簡単に管理ができる。
エクセルに慣れている人なら、とっつきやすく、非常に使いやすい。
⑤従業員が、自分で入力することができる。
⑥社会保険労務士などの専門家と相談しながら 自社が使いやすいように、運用していける。
社内にデータを保管するので、安心。
労働者が増えると、管理するのが大変
②労働者に、勝手に書き換えられてしまうリスクがある。
関数、マクロを使って作成するのが大変

中小企業ですと、労働者はそこまで多くないのでメリットが1番多く、デメリットが1番少ない“エクセルでの管理”が最適ではないでしょうか。

年次有給休暇管理簿の記載事項は?

「年次有給休暇管理簿」には“3つのこと”を必ず記載しなければいけません。

その3項目は、①時季、②日数、③基準日です。

必ず記載が必要な3項目

①時季

労働者が年次有給休暇を取得した日の“日付
連続で取得した場合は、〇月〇日~〇月〇日という記載でOK。

②日数

1年間に従業員が取得した有給休暇の日数

③基準日

労働者が入社して6か月たつと、年次有給休暇が発生する。
その“発生日”が基準日となる。
社員数が多くて管理が大変な場合は、年次有給休暇は一斉付与する場合があり、その場合は“一斉付与日”を記載。

※年次有給休暇が“労働者側からの時季指定”なのか、“会社側からの計画付与”なのかは、記載する必要はありません。

年次有給休暇管理簿の作成タイミングは?

「年次有給休暇管理簿の作成のタイミング」は“基準日”がオススメです。

法律では「年次有給休暇管理簿」は、年次有給休暇を与えたときに作成しなければならないとされています。

要するに、労働者からの申し出、もしくは会社から「この日を年次有給休暇にする」という時季指定がなければ、「年次有給休暇管理簿」の作成が義務ではないということになります。

しかし、年次有給休暇を使うまで「年次有給休暇管理簿」を作成しないとなると、すべての労働者の分ができるまで時間がかかります。

労務管理ということを考えると、よい方法とはいえません。

労働者が、もし年次有給休暇を2年取得しなければ、2年間「年次有給休暇管理簿」が“作成されない”という事になります。

そのため、労働者が基準日を迎えたら「年次有給休暇管理簿」を作成するのがよいでしょう。

年次有給休暇管理簿の基準日はいつ?            

「年次有給休暇管理簿」の基準日をいつにするか?
社長が悩む問題の1つになります。
結論としては、基準日は“決まった日に統一”して管理するがオススメです。

“新卒で入社した社員がほとんどである会社”や中途社員は“5月入社”限定ということなら、簡単です。しかし、中小企業の多くが新卒での入社がほとんどなく、“中途採用を毎回同じ月”にすることはできないのが現実ではないでしょうか?
現実は、転職者はバラバラの月と日で入社することが多く、その場合、「年次有給休暇管理簿」の作成のタイミングは、「A君は、5月11日」「B君は11月30日」「C君は2月3日」となってしまいます。

こうした事態に対応するため、厚生労働省は2つの方法があるとしています。
①すべての労働者の基準日を、“決まった日”にする
②決まった日ではなく、毎月何日と“日付”だけ決める

まず、①から解説いたします。 

①すべての労働者の基準日を“決まった日”にする場合 

例えば、通常Aさんが“4月1日”入社なら基準日は“10月1日”になります。しかし①の方法を採用して、すべての従業員の基準日を“1月1日”に合わせます。
すると、Aさんの基準日は“1月1日”に前倒しされ、当時、取得義務も前倒しされます。
労働者に対して法定の基準日より前倒して10日以上の年次有給休暇を付与した場合には、使用者は、その日から1年以内に5日の年次有給休暇を取得させなければなりません。

つまり①の場合、“10月1日から9月30日”で10日“翌年1月1日から12月31日”で11日の年次有給休暇を与えることになります。
ただし、“9月1日~11月30日”が2重に計算され、一時的に残日数が最高33日になる場合が発生します。なお、クラウドの勤怠管理システムは、これらに正確に対応していない場合もありますので、注意が必要です。


このように、前倒しすると、一時的に有給休暇は増えてしまいます。しかし、翌年から総務、人事の有給休暇の管理が劇的に楽になります。


なお、下記のように簡単にする、重複期間を年5日の取得日数を期間に応じて案分する方法もあります。
この日数がAさんに、法律上必ず与えなければならない年次有給休暇の日数になります。
次に②について解説します。

②決まった日ではなく、毎月何日と“日付”だけ決める場合

Aさんが1月17日に入社したとします。この場合Aさんは、6か月が過ぎた7月17日が基準日です。
そこでこの方法を採用し、基準日を1日にします。そうすると、基準日は、7月1日になります。  
この方法だと、年次有給休暇の期間がほとんど重ならないので、計算がしやすくなります。

ただし、1年のうちに何度も誰かしらの基準日が発生することにになります。そのため、労働者がある程度の人数の会社には、①がオススメです。

しかし、御社にとってどの方法がよいかは一概にはいえません。どちらがよいかは、ぜひ社会保険労務士にご相談ください。

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ロームでは、2019年4月の有給義務化にあわせて、エクセル形式のオリジナル有給管理簿を作成しました。
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