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2021.10.04

高齢者の雇用で受給できる助成金とは?助成金の種類や受給条件を解説

2021年4月に「高年齢者雇用安定法」が改正され、会社に70歳まで就業機会の努力義務が課せられました。コロナなどで経営が厳しい会社にとって、70歳までの就業機会の延長などに負担に感じている社長さまも多いと思います。

この記事は、上手に高齢者雇用を実施したい社長に、助成金を提案しています。

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高齢者の雇用によって受給できる助成金とは?

高齢者を雇用することで受給できる助成金にはさまざまな種類があり、雇い入れる労働者の年齢や勤め先の就業規則内容などによって、助成金の種類や受給できるかどうかが変わってきます。

「65歳超雇用推進助成金」は、既に高齢者を雇用している事業主に支給される

「65歳超雇用推進助成金」は、既に一定の年齢以上の高年齢労働者を雇っている事業主が、定年年齢の引き上げなどの就業規則改定などを行った際に支給される助成金です。

この助成金は、65歳超継続雇用促進コース、高年齢者評価制度等雇用管理改善コース、高年齢者無期雇用転換コースの3種類のコースに分かれており、それぞれ支給条件と支給金額が異なっているため、間違えないように注意しましょう。

「特定求職者雇用開発助成金」は、新しく高齢者を雇い入れた事業主に支給される

「特定求職者雇用開発助成金」は、ハローワークなどを介して、新しく高年齢労働者を雇い入れた事業主に対して支給される助成金です。

この助成金には、高齢者雇用を対象としたもの以外にも、生活保護受給者や発達障害者などを対象とした複数のコースがありますが、条件を満たして高齢者を雇用することで対象となるものは、生涯現役コースと特定就職困難者コースの2種類となっています。

65歳超雇用推進助成金|65歳超継続雇用促進コース

この助成金は、定年年齢の引き上げなど就業規則等を改定した事業主に支給されますが、原則としては1事業主につき1度限りの支給となっていることが特徴です。

しかし、70歳未満の雇用確保制度を導入したことでこの助成金を支給された事業主は、翌年度に70歳以上の雇用確保制度を導入すると、当該年度の助成金額から前年度の受給金額を差し引いた額を受給できます。

助成金の支給対象は、定年年齢の引き上げなど就業規則等を改定した事業主

この助成金は、

  • 定年年齢を65歳以上にまで引上げる
  • 定年制度を廃止する
  • 希望者は66歳以上まで働くことができる継続雇用制度を導入する
  • 定年後または継続雇用制度が終わった後に他の事業主が引き続き雇用する

という上記の制度のいずれかを実施した上で助成金申請を行った事業主に支給されます。

またこの助成金が支給されるには、

  • 上記の新制度を導入実施した際に経費が発生していること
  • 助成金申請日の前日の時点で1年以上勤務している60歳以上の雇用保険被保険者が1人以上いること
  • 高年齢者雇用推進者を選任した上で健康管理の配慮や賃金体系の見直しなどの措置を1つ以上実施していること

などの支給要件も満たしておかなければなりません。

助成金申請を考えている事業主の方は、申請前に全ての支給要件を満たせているかどうかを確認しておくようにしましょう。

支給金額は、引き上げた定年年齢や雇用保険被保険者数によって変わる

そしてこの助成金の金額は、助成金申請のために実施した制度の内容や、引き上げた定年年齢、60歳以上の雇用保険被保険者数などによって変動します。

出典:独立行政法人 高齢・障害・求職者雇用支援機構

上記の表からわかるように、最も支給金額が大きくなるのは60歳以上の雇用保険被保険者数が10人以上いる事業所で、定年年齢を70歳以上に引き上げるか廃止した場合です。

上記の表の()は引き上げ幅となっており、例えば10人以上の事業所で定年年齢を66歳から69歳にすると3歳引き上げということで助成金は35万円になりますが、62歳から68歳にすると6歳引き上げということ105万円になります。

このように、引き上げる年齢によってこれだけ大きく変動するため、今後の高齢化社会のためにも定年年齢は高めに引き上げるようにしてみてはいかがでしょうか。

65歳超雇用推進助成金|高年齢者評価制度等雇用管理改善コース


高年齢者評価制度等雇用管理改善コースは、高年齢者の能力評価制度、勤務時間見直し、負担軽減のための在宅勤務制度、研修制度、法定外の健康管理制度などの高年齢者の雇用推進のための制度を実施した事業主に支給される助成金です。

この助成金では、実施する制度の計画について記載された「雇用管理整備計画書」を提出し、計画書が認定を受けた後に助成金の申請書を提出するという2回に分けての申請が必要となっています。

助成金の支給対象は、雇用管理整備計画書を提出して認定を受けた事業主

高年齢者評価制度等雇用管理改善コースは、高年齢者の雇用推進のための雇用管理制度整備措置を実施した事業主に支給される助成金です。

しかし、その雇用管理制度を整備するための措置が実施される3ヶ月前までに「雇用管理整備計画書」を提出して認定を受け、整備措置実施後は、実施後6ヶ月間の状況を報告するための書類を提出する必要があるため、申請までに多少時間がかかるようになっています。

また、助成金申請の時点で1年以上勤務している60歳以上の高年齢労働者が、整備措置実施後も6ヶ月以上雇用されている必要があるなど、助成金支給に必要な支給要件は複数あるため注意が必要です。

支給金額は、雇用管理制度の見直しにかかった費用の60%

高年齢者評価制度等雇用管理改善コースの助成金額は、雇用管理整備措置の実施で発生した経費の60%となっていますが、初回申請時は実際に発生した経費の額に関わらず、実施に50万円の費用がかかったものとみなして、50万円×60%=30万円となります。

この割合は中小企業の場合に60%となりますが、それ以外では45%となり、また生産性要件を満たした場合は、中小企業で75%、それ以外では60%と、条件に応じて変動することが特徴です。

この助成金は、より多くのシニア層に活躍してもらうための措置を事業主に実施してもらうために設けられており、「社会保険労務士法人 ローム」では、高年齢者を対象にした能力意欲向上研修を顧問先に無料で提供して、シニアの意欲と能力の向上を実現しつつ、助成金を活用しています。

65歳超雇用推進助成金|高年齢者無期雇用転換コース


高年齢者無期雇用転換コースは、65歳超雇用推進助成金の別のコースや他の助成金とは異なり、50歳以上の有期契約労働者のみが対象となっており、彼らを無期契約として雇用することで助成金の支給対象となります。

助成金の支給対象は、無期雇用転換計画書を提出して認定を受けた事業主

このコースは、高年齢者評価制度等雇用管理改善コースと同じく2回に分けて申請する必要があります。

まず有期契約者を無期雇用に転換するという旨の計画書を提出して認定を受け、その後計画書で提示した期間内に50歳以上定年年齢未満の有期契約者を無期雇用に転換し、転換後はその労働者を6ヶ月以上続けて雇用し、転換後の6ヶ月分の給料を支払ってから助成金の申請書を提出するという流れです。

こちらも申請までに時間がかかるため、高年齢者評価制度等雇用管理改善コースと似ているように思うかもしれませんが、こちらのコースで無期雇用に転換した時点での労働者の年齢が64歳未満である必要があります。

支給金額は、対象労働者1人につき48万円

このコースの助成金額は、無期雇用に転換した労働者1人につき中小企業の場合48万円(生産性要件を満たせば60万円)、中小企業以外では38万円(生産性要件を満たせば48万円)です。

注意しなければならないのは、この助成金は同じ年度の1事業所につき、対象労働者が10人までとなっていることです。そのため、生産性要件を満たした中小企業の場合、1年で受給できる助成金額は最大で600万円となります。

特定求職者雇用開発助成金|生涯現役コース

特定求職者雇用開発助成金の生涯現役コースは、ハローワークなどの職業紹介事業者を介して65歳以上の離職者を、1年以上雇用することを前提として雇い入れた事業主に対して支給される助成金です。

助成金の支給対象は、65歳以上の高齢者を1年以上継続して雇用する事業主

この助成金は雇い入れた時点で65歳以上となっている高年齢者を1年以上継続して雇用することを前提としたものです。

そのため、この助成金を申請した後になって助成金の対象労働者の方が離職、あるいは解雇されるとなると、助成金を満額受給できなくなります

さらに平成30年10月からは支給要件が変更となっており、これまで1年の間で対象労働者が離職すると離職した月までの支給、解雇すると返還となっていた支給要件は、離職すると支給対象期(6ヶ月)分の助成金はなし、解雇すると3年間この助成金が支給されなくなる、というものに変更されました。

特に解雇の場合は、以前までは助成金の返還だけとなっていたものが、3年間の本助成金不支給というペナルティに変わってしまっているため、これまでにこの助成金制度を利用したことのある事業主は特に注意が必要です。

支給金額は、対象労働者1人につき70万円(35万円 × 2期)

この助成金は、対象労働者を雇用してから半年ごとに助成金が支給されるようになっていることが特徴です。

助成金額は、中小企業で35万円ずつの計70万円、中小企業以外で30万円ずつの計60万円となります。

また、その対象労働者が1週間に20時間以上30時間未満のみ働く短時間労働者であれば、中小企業で25万円ずつの計50万円、中小企業以外で20万円ずつの計40万円となっています。

特定求職者雇用開発助成金|特定就職困難者コース


特定求職者雇用開発助成金の特定就職困難者コースは、生涯現役コースと同じく、ハローワークなどの職業紹介事業者を介して対象労働者を雇い入れた事業主に対して支給される助成金です。

しかし生涯現役コースとは違い、こちらでは60歳以上65歳未満の高年齢者を65歳以上になるまで雇用し、なおかつ雇用期間が2年以上になると認められる必要があります。

助成金の支給対象は、60歳以上65歳未満の高齢者及び障害者等の就職困難者

この助成金では、高年齢者だけではなく障害者など他の就職困難者も対象労働者となっていますが、高年齢者と障害者では支給金額も助成対象期間も異なっています

また、このコースも平成30年10月から支給要件が変更となっており、生涯現役コースと同じペナルティがあるため、事業主の方はよく考えて判断するようにしましょう。

支給金額は、対象労働者の年齢や障害の有無によって変わる

この助成金も、生涯現役コースと同じく、対象労働者を雇用してから半年ごとに助成金が支給されるようになっており、助成金額は、中小企業で30万円ずつの計60万円、中小企業以外で25万円ずつの計50万円です。

そして、その対象労働者が1週間に20時間以上30時間未満のみ働く短時間労働者であれば、中小企業で20万円ずつの計40万円、中小企業以外で15万円ずつの計30万円となります。

その他の高齢者雇用に関する助成金


以上、「65歳超雇用推進助成金」と「特定求職者雇用開発助成金」について解説しましたが、その2つ以外にも高齢者雇用に関する助成金制度が設けられているため、上記の助成金申請要件を満たせないからといって諦めるのではなく、他にも受給できそうな助成金はないかを確認しておくことが重要です。

高年齢労働者処遇改善促進助成金

高年齢労働者処遇改善促進助成金とは、令和3年4月1日に新設されたばかりの新しい助成金です。

これは60歳から64歳までの高年齢労働者の賃金規定等の増額改定に取り組んだ事業主に対して支給される助成金であり、改定後の賃金規定で半年以上運用を継続した事業主が対象となります。

助成金額は、賃金規定改定前の半年間で対象労働者が受給した給付金の総額から、改定後の半年間で対象労働者が受給した給付金を引いた金額に4/5を乗じた金額です。

また、これは令和3,4年の中小企業の場合の割合であるため、中小企業以外の場合は2/3を、令和5,6年度の中小企業の場合は2/3を、中小企業以外の場合は1/2を乗じた金額となります。

中途採用等支援助成金|生涯現役起業支援コース

中途採用等支援助成金の生涯現役起業支援コースとは、新たに起業した40 歳以上の中高年齢者の方が、計画期間内に60歳以上の労働者を1名以上、40歳以上60歳未満の労働者を2名以上または40歳未満を3名以上雇用した場合に支給される助成金です。

また、助成金申請前に計画書を提出して認定を受けている必要があり、その計画書で指定した1年間の間に上記の対象労働者を雇用しておかなければなりません

助成金額は起業者の年齢によって変わり、60歳以上の場合は、計画期間内の費用(最大200万円)に2/3を乗じた金額+1/4を加えた金額、60歳未満の場合は、計画期間内の費用(最大150万円)に1/2を乗じた金額+1/4を加えた金額となります。

高齢者雇用による助成金の種類と条件を把握しておくことが重要

対象を高年齢労働者に限定した助成金だけでもこれだけさまざまな種類の助成金があります。今後、高齢者の雇用はさらに増えていくと考えられるため、高齢者雇用による助成金の重要性もますます高まっていくでしょう

社会保険労務士法人ロームでは助成金の活用などさまざまなサポートを行っています。ロームにご相談いただければ、高齢者雇用などのピンチもチャンスに変えるお手伝いをさせていただきます。上手に高齢者雇用を実施したい社長さまはぜひお気軽にお問い合わせください。

 

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