この記事は、2代目社長が問い合わせが多い、直接給付について新聞報道などを参考に、今予想される範囲で解りやすく、質問が多いことを中心に解説しています。
社会保険労務士 牧野 剛
新制度(「休業者給付金」)
安倍晋三首相は5月14日の記者会見で、休業手当を受け取れなかった中小企業の従業員に直接給付する新たな制度(「休業者給付金」)を創設する考えを表明した。対象は、中小企業の従業員で給付額の上限は月33万円程度で調整しています。(参考:毎日新聞)
毎日新聞によると、申請は本人がオンラインか郵送で申請でき、雇用保険に加入していないアルバイトなどの非正規従業員も対象とし、給付率は賃金の8割とする案が有力とのことです。
雇用調整助成金を支給しない方がお得なの?
この件について、中小企業から問い合わせが増えています。
問い合わせ内容は、
国が8割を補償してくれるなら、雇用調整助成金を申請しない方がかえって得ではないのか? |
です。
資金繰りが厳しい中で、休業手当を支給している中小企業にとって、国が直接、休業手当を支給してくれる方が助かります。
「休業者給付金」の対象は?
検討されている休業者給付金の対象は、①から③になると予想されます。
①中小企業の労働者で、新型コロナウイルスの影響で休業を余儀なくされているものの、勤め先から十分な休業手当を受け取れていない人 ②労働時間が週20時間未満で、雇用保険に加入していないアルバイトなどの非正規労働者にも給付を検討 ③雇用調整助成金を申請していない中小企業の従業員 |
ここで問題になるのは、③の雇用調整助成金を申請していない中小企業の従業員で、それが使用者の責めに帰すべき休業かどうかです。
労働基準法との兼ね合いは?
ただし、労働基準法で
会社側の都合により労働者を休業させた場合、休業させた所定労働日について、平均賃金の6割以上の手当(休業手当)を支払わなければなりません。(第26条) |
と定められています。
そこで、
加藤厚生労働大臣は、この直接給付金に関し、「使用者の責に帰すべき事由により労働者を休業させた場合には、休業手当の支払い義務が生じる」 |
と強調しました。(参考:時事通信社)
したがって、使用者の責めに帰さない休業に優先して、支給される仕組みであることが予想されます。
予想される支給方法は?
日経新聞によると、休業した労働者が事業主から「休業証明」を受け取り、自らハローワークに申請することによって、直接本人に給付金が支給される仕組みになりそうです。
手続きに必要な「休業証明」は、退職時に事業主から交付される離職票に似た様式になると予想されます。
この様式に、事業主が直近の賃金や休業した日数などを記載し、それをもとにハローワークにおいて給付金の額が算出され、支給される、「失業等給付」のような仕組みが予想されます。
新制度の課題は多い