経営者の方の中には、いつの間にか資金繰りが悪化してしまったという方も少なくないでしょう。
資金繰りが悪化してしまう原因は、会社の事情によってもさまざまです。経営が悪化しないような工夫を手当たり次第していても、資金繰りは良くなりません。
資金繰りを改善するには、悪化の原因を探すことが大切です。
キャッシュ・インの減少(現金収入の減少)
- 売上げの減少( 価格 × 数量 × リピート率 )
- 費用の増加 ( 原価 、固定費 )
- 売掛金の回収の遅れ
- 借入の不足
キャッシュ・アウトの増加(現金支出の増加)
- 社会保険料の対策を打っていないこと
- 役員報酬の設定ミス
- ムダに多い在庫
- 過大な設備
- 不良資産
- 仕入債務の早期支払
- 前払金、貸付金、仮払金の増加
- 借入金の早期返済
企業における資金繰りの考え方とは?
「資金繰り」とは、企業を経営するうえで欠かせないお金のやりくり(管理)をすることです。
企業を継続するためには、資金繰りが非常に重要です。資金繰りをおろそかにしてしまうと、仕入れと支払いにバランスが取れなくなり、従業員にも給料が支払えなくなってしまう恐れがあります。資金繰りは、売上金の回収や銀行への支払いなどお金の流れを管理します。このため、キャッシュフロー(現金の流れ)とも呼ばれています。
従来のように銀行からの融資をあまりあてにできない資金調達が難しい時代となっている現代において、自社でキャッシュフローを改善する姿勢が重要になります。
資金繰りを良くする改善点とは
売上げを増やす
売上げを増やす一番早い方法は、価格を上げることです。ほとんどの会社が安売りをし過ぎです。
中小企業は、そもそも安売りに向いていません。大量に作れないからです。大企業も安売りをしてはいけません。それは、人口減少社会になったからです。
働く世代(生産年齢人口=15歳以上65歳未満)が毎年増え続けた高度経済成長時代は、作れば作るほど売れる時代でした。「より良いものをより良く」は、そんな時代の発想です。しかし、日本の消費をけん引した団塊の世代が50代になってから、働く人が減って、働く人に養われる従属人口(年少人口と老年人口)が増えています。
大量生産に消費が追い付かなくなっているのです。
日本では、「より良いものをより安く売る」の当たり前の発想ですが、アメリカをはじめとして先進国は、「より良いものをより高く売るためにどうしたら良いか?」と発想しています。
<値上げの理由>
価格を上げるには、
- 人件費が上がった
- 材料費が上がった
- 良い材料を使うようになった
- メニューを変えた
- 新商品となった
- ガソリンなどが上がった
など値上げの理由を考えましょう。
<数量を増やす>
数量を増やすには、どうしたら良いでしょうか?
まず、「数量」を分解して考えると良いでしょう。
ココで質問です。
次の3つ中で、一番難しい数量アップはなんでしょうか?
・新規客の集客
・流出客の呼び戻し
・購買点数アップ
会社によって違いはあると思いますが、一般的に新規集客です。新規集客は、一番難しく、効果が低いです。
しかし、新規集客から手をつける会社が一番多いです。
数量アップでも、利用率が高い既存客に購買点数アップを働きかけるのが一番早く効果がでます。
<売上げを増やす手順>
売上げを増やすにも「手順」と「コツ」と「考え方」があります。
- 価格を見直す
- 購買数量をアップさせる
- リピート率を上げる
- 集客数を増やす
掛債権はできるだけ早く売回収する
売掛債権をきちっと管理できていないと、どの債権が回収できていて、どの債権が長引いているのかわからなくなることがあります。
売掛債権の回収に時間がかかるほど売上債権の回転率が下がり、経営を圧迫するようになるため注意が必要です。売掛金の回収基準を規則として作成しましょう。
また、取引先企業の情報収集も大切です。情報を基に、売掛金限度額を設定しておくことで、貸倒れを防ぐことができます。
現在継続している取引先の回収期限、支払い期日を交渉して改善する
資金繰りを改善するには「売掛金の回収をできるだけ早くすること」「支払いには余裕を持つこと」が大切です。 このため、すでに以前から契約が続いている取引先とも回収期限などについて交渉し直してみることが大切です。無理な設備投資をしない
事業が成功して経営が良くなったからといって、すぐに自社ビルを購入したり、賃料の高い物件に移動したりするのは要注意です。 「本当に自社ビルでなくてはならないのか」「自社ビルが利益につながるのか」をしっかりと考えましょう。広告の宣伝効果を見極める
宣伝すればするほどいいというものではありません。当然宣伝にも費用がかかるため、投資としてその効果を見極める習慣をつけましょう。広告費と、広告によって得られる収益を比較したとき、収益のほうが少ない場合は、広告を抑えたり、広告効果が上がるように工夫しなければいけません。
LTV(ライフ・タイム・バリュー)という考え方をご存知ですか? 「お客様から生涯受け取れる価値)」という考え方です。この生涯顧客価値と広告費用を比べる必要があります。この発想をもっていないと、広告を使って、ビジネスを大きく加速させることができません。
しかし、資金繰りが厳しい場合は、あえて広告費を一時的に削減して、改善するのが効果的な場合があります。
> 広告にも、看板やインターネットなどさまざま手法があります。なかには、オウンドメディア(「ブログ」)やファイスブックなどソーシャルネットワークなど、お金が掛からない宣伝方法もあります。
収益が上がらないからと広告すべてを諦めるのは早計です。ソーシャル・ネットワークなどを「一番早く、たくさんの反応が直接返ってくる広告は何か?」という発想でコストと資金をコントロールしながら、集客をしていく発想が資金繰りが厳しい時には重要です。
社労士に役員報酬組み直し・助成金申請を依頼するのも一つの手
資金繰りが厳しいときは、「役員報酬の組み直し」などによる社会保険料削減と生命保険、損害保険などの保険の見直しが効果的です。
資金繰り対策ができる社労士に早めに相談することをお薦めします。
また、中小企業とした助成金や補助金が登場しています。雇用促進や事業振興などその目的や用途はさまざま。
一定の条件を満たすことで国から資金が支給され、融資の場合には返済が不要になるため、企業にとって喉から手がでるほど欲しい資金を獲得できるチャンスだということです。
ただ、資金が欲しいから申請するというだけでは通りません。
申請のプロである社労士に依頼し、助成金や補助金の申請を行うことをおすすめします。
なお、助成金は申請から受給までに時間が掛かります。緊急の資金繰り対策に、助成金は不向きです。
会社経営の資金繰りを改善するために、何より重要なのは無駄を省き、問題点を見直すということです。
ですが、「無い袖は振れない」ものです。
まずは「役員報酬の組み直し」と助成金や補助金といった企業支援を目的とした資金調達方法を利用してみることが、将来に大きく関わってくることでしょう。
まずはお近くの社労士に、資金繰りに関する相談をしてみてはいかがでしょうか。
経営が厳しいときの賃金の決め方は?(資金繰りが厳しい時の賃金の払い方) 経営が厳しいときの賃金の決め方は?(資金繰りが厳しい時の賃金の払い方)