値上げ交渉や価格改定に頭を悩ませている経営者の皆様、最低賃金の上昇にどう対応すべきか、不安に感じていませんか?
年々増加する最低賃金やコストの圧力は、中小企業の経営を直撃し、利益を確保することがますます難しくなっています。
しかし、適切な値上げ交渉と戦略を実践することで、利益を守りながら、顧客や従業員から信頼される企業へと成長させることができます。
この記事では、最低賃金上昇の影響に対応し、値上げ交渉を成功させるための具体的な手法をお伝えします。
記事を読んで得られる3つのポイント
- 値上げ交渉を成功させる営業術
- 価格改定による利益拡大のための戦略
- 従業員や顧客を巻き込み、魅力的な会社を築く方法
これらの手法は、「毎年あがる最低賃金をどう価格に転嫁していけばいいのか?」という経営者の悩みを解決する糸口となるでしょう。
「知らないと損する値上げ交渉術」ですので、ぜひ最後までお読みください。
値上げ交渉の重要性と成功のための手法
値上げ交渉は、企業が利益を維持し、成長を続けるために欠かせない重要な戦略です。
特に、コストの上昇や最低賃金の増加が続く中、値上げは避けられない現実となっています。
なぜ?今、値上げ交渉が必要なのか?
ここでは、値上げ交渉の重要性と成功のための具体的な手法について詳しく解説していきます。
最低賃金の上昇とその背景
まず、最低賃金の継続的な上昇が大きな影響を与えています。
例えば、日本では2024年に最低賃金が1,054円に引き上げられました。
さらに、岸田首相は2030年半ばには最低賃金を1,500円にまで引き上げる方針を示しています。
これにより、人件費が劇的に増加し、企業はそれに対応するために価格の改定を行わざるを得ません。
賃金が増加すれば、当然ながら企業の支出も増え、そのコストをどこかで補填する必要があります。
最低賃金が上がる背景には、政府が、
「税率を上げずに税収をUP!」 「社会保険料率を上げずに社会保険料をUP!」
といった税収を増やしたいという狙いがあります。
賃金が上がることで、所得税や消費税が増え、また、社会保険料も増加します。
これは、課税対象額が増えるためであり、結果として国全体の財源を強化するという目的があるのです。
物価の上昇とインフレの影響
最低賃金の上昇に加え、インフレの影響も無視できません。
特に円安の影響で輸入品の価格が上昇し、物価全体が上がっている状況です。
日本は長らく低金利政策を維持してきましたが、これが他国との金利差を拡大させ、結果として円安が進行。
これにより、日常生活に必要な物品の価格が上昇し、企業はその影響を受けました。
企業は、こうしたインフレの影響をおさえるために、価格改定を行う必要があります。
価格が上がらなければ、コスト増加に対して利益が圧迫され、最終的には企業の健全な経営が難しくなります。
特に中小企業にとっては、この物価上昇は大きな負担であり、適切な価格設定が求められます。
労働力人口の減少と将来的な影響
さらに、労働力人口の減少も重要な要因です。
日本の労働力人口は、2015年の6,600万人から2030年には5,600万人にまで減少すると予測されています。
この人口減少に伴い、社会保険料や所得税の納付者が減少し、国全体としての財源確保が難しくなるため、政府は賃金を引き上げることで対処しようとしています。
労働人口が減少する中で、残された働き手にかかる負担が増え、企業はその負担に対応するためにも価格の引き上げが必要です。
値上げが必要な背景には、最低賃金の上昇、インフレによる物価上昇、労働力人口の減少といった複数の要因が絡み合っています。
企業がこれらの外部要因に対応し、健全な経営を維持するためには、適切なタイミングで価格改定を行うことが不可欠です。
価格を上げることで、コスト増に対応しつつ、企業の利益を確保し、将来に向けた安定的な運営が可能になります。
中小企業への価格転嫁支援策
政府は、中小企業が適正な価格転嫁を行えるよう、積極的にサポートを行っています。
特に注目すべきは、「価格交渉促進月間」です。毎年3月と9月に設定され、中小企業が人件費や原材料費の上昇に対応して価格を引き上げるための交渉をサポートしています。
調査によると、約6割の企業が価格交渉に成功していますが、人件費や原材料費の上昇分の転嫁は平均46.1%にとどまっており、企業は自腹で約半分のコストを負担しています。
エネルギーコストに関しても同様に、約40%しか転嫁できていないのが現状です。
物価上昇の影響で、中小企業の利益が圧迫されている中、政府の支援を活用し、今後は価格交渉力の強化が求められています。
企業はコストを適切に転嫁することで、経営の健全化を図ることが必要です。
粗利益を重視した経営
経営者にとって、粗利益を意識した経営は持続的な成長のための重要な鍵です。
粗利益は、売上から直接的な原価を差し引いたものであり、経営判断において最も重視すべき指標の一つです。
特に昨今、物価の上昇や最低賃金の引き上げが続く中で、粗利益を適切に確保することが、企業の生き残りを左右します。
価格転嫁ができない場合のリスク
企業の物価指数は2020年を基準に約20%上昇し、毎年の昇給や最低賃金の引き上げにより、固定費が年々増加しています。
しかし、価格転嫁できる割合はわずか2%程度に留まることが多く、経営者にとって大きな負担となっている状況です。
たとえば、売上高営業利益率が10%の優良企業であっても、 5年後にはこの利益がマイナスになる リスクがあります。
最低賃金の上昇は今後も続くため、対応策が必要です。
一方で、粗利益を意識して毎年10%の価格改定を行えば、たとえ販売数量が減少しても、粗利益総額を維持・向上させることが可能です。
販売数量が減少しても、価格改定を行うことで粗利益を維持。
人件費を削減し、効率的な経営を進めることで固定費の上昇に対応。
価格を適切に見直すことで、営業利益が向上。
適切な価格改定を行うことで、営業利益が2.36倍に増加。
このように、粗利益を意識した経営により、コスト増に対応しつつ利益を確保することが可能です。
知らないと損する値上げ交渉術
値上げ交渉を成功させるためには、正しい手順と準備が必要です。
以下に効果的な手順をまとめました。
- 値上げを決定する
- 営業担当者の責任を問わないと決める
- 粗利益総額別にお客様と商品を並べる
- 儲からないお客様から優先して交渉を開始する
- 値上げの理由を明確にする
- お客様が納得する説明を準備する
- 資料を作成する
- 説明のロールプレイを行う
- 進捗を管理し、フォローアップを継続する
ひとつずつ、詳しくみていきましょう。
1. 値上げを決定する
まずは、「値上げをする」という明確な決断を下すことが必要です。
最低賃金の上昇や物価高騰が続く中、値上げをしないと経営は厳しくなります。
この現実を理解し、腹を決めましょう。
2. 営業担当者の責任を問わない
営業担当者に値上げ交渉を任せる際、結果に対して責任を問わない姿勢が重要です。
営業が安心して交渉できる環境を整えることで、結果に繋がりやすくなります。
3. 粗利総額順にお客様と商品を並べる
お客様や商品を粗利総額順に並べましょう。
4.儲からないお客様から優先して交渉を開始する
3.で粗利益総額順に並べたら、利益が少ない順に値上げ交渉を行います。
値上げをしないお客様を決めるのもポイントです。
5. 値上げの理由を明確にする
値上げをする際には、しっかりとした理由を用意します。
最低賃金の上昇やコスト増など、客観的なデータを示し、説得力を持たせましょう。
6. お客様が納得する説明を準備する
お客様が納得できるような説明を準備します。
価格上昇の理由を丁寧に伝え、サービスの向上や将来の安定価格への布石として説明することが大切です。
7. 資料を作成する
視覚的にわかりやすく、質の高い資料を準備しましょう。
信頼性を高め、交渉の成功に貢献します。
8 説明のロールプレイを行う
交渉前にロールプレイを行い、実際の場面で自信を持って説明できるように準備します。
営業チーム内でのシミュレーションは効果的です。
9. 進捗を管理し、フォローアップを継続する
交渉の進捗をしっかり管理し、継続的にフォローアップを行います。
交渉が一度で成功するとは限らないので、持続的な取り組みが重要です。
以上の手順を踏むことで、値上げ交渉を効果的に進めることができます。
値上げを決めるときのポイント
値上げを検討する際、まず意識すべきはその効果です。
マッキンゼーの調査によると、価格をわずか1%上げるだけで、売上数量が同じであれば、営業利益が8%増加するというシミュレーションが出ています。
これはアメリカの企業に限った話ではなく、安売りが一般的な日本でも同様です。
特に、日本の企業で1%の値上げを行うと、営業利益は23.2%も変化します。
このような結果を理解し、 値上げの重要性を認識することが成功のカギ となります。
価格改定の手順
価格改定を成功させるためには、効果的な手順を踏むことが重要です。
- 良好な関係性を築く
- 自社の価値を伝える
- 新規顧客から価格改定を始める
- 粗利益が少ない既存顧客と交渉する
- 事前に改定の期日を伝える
- 適正価格への確信を持つ
- 顧客減少の覚悟を持つ
- 粗利益の大きい顧客とは直接交渉する
下記にひとつずつ、詳しく解説していきます。
1.良好な関係性を築く
価格改定を成功させるためには、まず顧客との信頼関係が大切です。
関係が悪いと交渉は失敗しがちなので、普段からのコミュニケーションが重要です。
2. 自社の価値を伝える
顧客に自社の価値をしっかり理解してもらうことが必要です。
質問を投げかけ、顧客が自分で自社の強みを再確認するよう促しましょう。
3. 新規顧客から価格改定を始める
既存顧客よりも、新規顧客の方が価格改定をスムーズに受け入れやすいです。
まずは新規顧客から始めて、スムーズに改定を実行しましょう。
4. 粗利益が少ない既存顧客と交渉する
既存顧客の中で利益が少ない顧客から交渉を始めると効果的です。
利益の少ない顧客への対応を優先し、必要なら取引を見直すことで、全体の収益改善を図ります。
5. 事前に改定の期日を伝える
価格改定は突然ではなく、事前に余裕を持って通知するのが重要です。
半年や1年前に告知することで、顧客の対応をスムーズにします。
6. 適正価格への確信を持つ
値上げは適正価格を請求するための正当な行動です。
過度なコストダウンによる現状を見直し、確信を持って顧客に価格を提示しましょう。
7. 顧客減少の覚悟を持つ
値上げにより一部の顧客が離れる可能性はあることを理解しましょう。
重要なのは利益を守り、成長の機会に変えることです。
8. 粗利益の大きい顧客とは直接交渉する
利益が大きい重要な顧客とは、必ず直接会って交渉します。
信頼を維持しながら話し合いを進めることが大切です。
この手順に従って、確実な価格改定を進め、企業の収益向上を目指しましょう。
値上げの理由を作るときのポイントと資料のまとめ方
値上げを進めるには、明確な理由を伝え、顧客に納得してもらうことが重要です。
効果的な資料を準備し、視覚的なアピールも忘れてはいけません。
ここでは、値上げ理由の作り方と資料作成のポイントを解説します。
ポイント
- 消費者向けには目立たない値上げを行う
- BtoBでは「価格改定」として伝える
- 具体的な値上げ理由を準備する
- 豪華な紙で視覚的効果を高める
1. 消費者向けの対応
値上げは、量や提供時間の調整、メニュー名の変更など、自然な形で行うと良いでしょう。大きく告知せずに進めるのがポイントです。
2. BtoBでの値上げ方法
企業間取引では「値上げ」ではなく「価格改定」として説明し、人件費や原材料費の増加を理由に伝えましょう。
具体的な要因を示すことで、顧客の理解が得られやすくなります。
3. 具体的な理由を作成
値上げ理由は、人件費や輸送費の増加、物価上昇などを挙げると効果的です。
具体的な数値や状況を示すことで、顧客に納得してもらいやすくなります。
4. 資料は豪華な紙で作成
視覚的な影響が大きいため、豪華な紙で資料を作成すると効果的です。
印刷された資料は公的な印象を与え、交渉を有利に進められます。
紙に書かれた資料を使うことで、視覚に訴え、交渉の成功率を上げることができます。
視覚に訴える情報は、顧客の判断に大きく影響します。
値上げ交渉では、納得できる理由を明確にし、視覚的に効果のある資料を活用しましょう。豪華な紙で作られた資料は、顧客に信頼感を与え、交渉を有利に進める手助けとなります。
価値ある会社づくりと従業員の巻き込み方
企業が成長するには、顧客と従業員から支持される魅力的な会社作りが必要です。
適切な価格改定で利益を確保し、信頼を得る方法を解説します。
顧客と従業員から選ばれる魅力的な会社を目指す
顧客や従業員に選ばれるためには、まず企業の「価値」を明確にする必要があります。
単に価格競争をするのではなく、他社にはない独自の強みを顧客に伝えることが重要です。
また、従業員にとっても働きやすい環境を提供し、企業の成長に貢献する喜びを感じさせることが必要です。
従業員の協力を得る
従業員を巻き込むためには、「労働条件の良い会社を作る」という目標を共有し、共感を得ることが大切です。
このようにして、従業員から支持される会社を作ると、結果的に顧客からも高く評価され、長期的な利益増加につながります。
粗利益を増やすために価格を上げる
従業員の給与や賞与を維持するためには、企業の粗利益を増やす必要があります。
そのためには、製品やサービスの価値を高め、価格を適切に引き上げることが不可欠です。
お客様に高く買ってもらうためには、信頼と満足度を提供することが大切です。
営業の強みを活かして売価を高める方法
顧客から「ありがとう」「助かるよ」という言葉を引き出せるサービスを提供することが、価格を引き上げる際に重要です。
顧客が満足するサービスや製品を提供することで、価格を上げたとしても理解を得やすくなります。
お客様の問題を解決することが鍵
営業の役割は、お客様の悩みを自社の商品で解決し、その対価として感謝とお金を得ることです。
顧客のニーズを理解し、それに応えることで、商品の価値が自然に高まり、結果的に値上げが受け入れられやすくなります。
売り込みではなくヒアリングを重視
商品を押し売りするのではなく、顧客の話を聞くことが重要です。
説明が多くなると、顧客の悩みが見えなくなり、結果として本当のニーズに応えられなくなります。
価値を伝えるためのヒアリング
顧客の問題をしっかり聞くことで、どの部分に自社の強みを生かせるかがわかります。
顧客が自社を選んだ理由や関心点を把握し、信頼を築いて価値を伝えましょう。
顧客の問題を解決できれば、商品やサービスの価値が高まり、値上げも受け入れやすくなります。強みを生かし、適正な価格で販売しましょう。
値上げ営業の成功確率を上げるには
何事も成功にはコツがあり、値上げ営業も例外ではありません。
多くの人は事前に調べずに行動してしまい、失敗を経験します。
しかし、成功者はノウハウやコツを先に調べて実行に移します。
まずは、値上げ交渉の具体的な方法やお客様のニーズに対する解決策を知ることが重要です。
ですが、多くの経営者は、時間やリソースの制約から、すべてのノウハウを自分で集めるのは難しいと感じています。
そのため、専門家の力を借りることも一つの方法です。
専門家に依頼すれば、確実なノウハウを活用して短期間で効果を上げることができます。
まとめ
値上げ交渉を成功させるためには、計画的な手順と全社的な協力が欠かせません。
特に、経営者や営業担当者だけでなく、従業員全体がその目的を理解し、共に取り組むことで、価格改定の影響を最小限に抑え、企業の利益を最大化することが可能です。
以下が主なポイントです。
- 値上げの理由を明確に伝える
- 顧客との信頼関係を強化する
- 従業員の理解と協力を得る
- 資料の質にこだわり、視覚的に訴える
- 効果的な戦略で交渉を進める
これらを基に、今後の企業戦略を考えることが必要です。
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