社会保険労務士法人 ロームのお役立ち情報

2021.11.10

労働者数が100人を超える中小企業は女性の活躍推進に取り組もう!

2022年からは女性活躍推進法がさらに改正され、労働者数が100人を超える一般事業主は女性活躍に取り組む行動計画提出が義務となります。

これまで女性活躍推進法の義務対象ではなく、女性雇用や女性活躍のための環境改善などがあまり進んでいなかった企業では、上手な対処方法がわからず、負担に思われている方もいらっしゃるかもしれません。

そこで今回は、女性活躍推進法や助成金などについて解説しますので、2022年から女性活躍推進法の対象となる企業の社長さまは、ぜひ参考にしてみてください。

改正後の女性活躍推進法とは?

日本では、2016年4月より「女性の職業生活における活躍推進」を目的とした「女性活躍推進法」が施行されています。この法律では、社員内での女性比率や女性の労働時間といった「状況把握・課題分析」、それらの課題を解決するためにどういった方針を取るのかという「課題解決のための行動計画」、そして女性の採用率や再雇用率などの「情報の公表」の3点を事業主に実施させるものです。

2016年当時、この女性活躍推進法は、301人以上の労働者がいる企業にとっては義務、300人以下の企業にとっては努力義務というものでした。しかし2020年に情報公開項目や特例認定制度の創設など内容が一部改正され、さらに2022年には義務となる対象労働者数が301人以上から101人以上へと変更になりました。

このように、現在の日本ではさらなる女性活躍が推進されています。ではその女性活躍推進法の内容である3点について解説いたします。

自社の女性の活躍に関する状況把握・課題分析

まず、女性の活躍状況と、女性が活躍できるようになるための課題分析ですが、これは事業主の独断で「自社ではこういう問題があるからこれが課題だ」と勝手に決められるものではなく、厚生労働省が定めた2つの区分からそれぞれ選択しなければならず、その区分とは以下のとおりです。

1.女性労働者に対する職業生活に関する機会の提供
2.職業生活と家庭生活との両立に資する雇用環境の整備

この2区分にそれぞれ「採用した労働者に占める女性労働者割合」や「男女ごとの平均勤続年数の差異」といった項目が設けられています。しかし、この2区分から1つずつ項目を選んで課題にすればいいというわけでもなく、さらにこの中に「必ず把握しておかなければならない基礎項目」が4つ存在するのです。

1.女性労働者に対する職業生活に関する機会の提供

  • 採用した労働者に占める女性労働者割合
  • 管理職に占める女性労働者割合

2.職業生活と家庭生活との両立に資する雇用環境の整備

  • 男女ごとの平均勤続年数の差異
  • 労働者の各月ごとの平均残業時間数等の労働時間

以上のように、決められた項目は必ず2つの区分からそれぞれ選んで把握すべき課題とする必要があり、さらに、その4つの項目以外でも「育児休業取得率」など事業者が把握しておくべきと判断した課題があれば、厚生労働省が定めた選択項目から選んで課題とすることができます。これは女性労働者のさらなる活躍を目指すものであるため、自社の女性労働環境にとっては何が問題なっているのかという、会社ごとに異なる課題を正確に把握することが重要です。

自社の女性の活躍に関する課題解決のための行動計画

課題解決のための行動計画では、上記の課題を踏まえた上で必ず以下の4点を盛り込んだ行動計画を策定し、各都道府県の労働局へ届け出なければなりません。

  • 計画期間
  • 1つ以上の数値目標
  • 取組内容
  • 実施時期

また、この行動計画内容は届出を行う必要があるだけでなく、自社の労働者及び、外部にも公表する必要があります。この公表は義務だからする必要があるというだけではなく、公表することによって、事業主側にとっても自社のことを知ってもらえるというメリットもあるのです。

自社の女性の活躍に関する情報の公表

また、女性活躍推進法では、行動計画内容だけでなく、現在の自社の女性労働者の活躍状況も公表しなければならないとされています。そして、公表する内容は、上記の「状況把握・課題分析」でも解説した、厚生労働省が定めた2つの区分から、それぞれ1つ以上選んだ項目です。

しかし、「有給休暇取得率」など「育児休業取得率」など項目によっては、知られることで福利厚生の手厚さなどが伝わり、就職希望者の増加に繋がる場合もあります。そのため、さらなる女性活躍推進のためにも、女性労働者の採用率などを改善し、社内環境の改善に努めることが重要と言えるでしょう。

中小企業は、女性の力をフル活用して業績アップ!

女性活躍推進法などによって女性のさらなる雇用が推進されていますが、女性雇用の推進は企業のさらなる発展に繋がることもあります。そのため、法律を遵守するためというだけではなく、むしろ企業側の利益のためにも、女性が活躍できる職場環境の改善に努めましょう。

2022年4月からは、労働者が101人以上の中小企業も義務対象となる

2019年に女性活躍推進法は一部改正されており、女性活躍推進法で決められている情報公表などの義務対象となる会社の労働者数は、301人以上から101人以上へと変更になりました。この改正内容は2022年4月施行予定となっており、労働者数が101人以上300以下なことからそれまでは女性活躍推進法の内容は努力義務でしかなかった事業者も、2022年からは義務対象となり、他人事ではなくなります。

新たに義務対象となる事業主は、2022年4月までに行動計画の届出や女性活躍に関する情報の公表などを行わなければならないため、まだ準備の終わっていない事業主の方は急いで準備を進めるべきでしょう。

女性活躍支援は女性従業員の定着率向上などにも繋がる

女性の雇用は法律遵守のためだけでなく、企業の発展にも繋がりうると解説しましたが、中には実際に女性雇用を支援するための制度を導入したことによって「女性従業員の定着率向上」などの結果に繋がったという企業もあります。

出典:「中小企業のための女性活躍推進ハンドブック」

上記の図は、仕事と育児を両立させる女性の支援を目的とした制度を導入した企業に対するアンケートの結果です。図を見ればわかるように、両立支援制度の導入は女性労働者の定着率向上に大きく影響しており、他にも労働者のモラルや意欲の向上、ストレス軽減など様々な面でも良い影響が出ていることから、仕事と育児の両立支援なども含む女性の活躍推進は企業側にとってもメリットになることがわかります。

このことからもわかるように、現在女性の活躍推進が進んでいない中小企業は今後さらなる業績向上のためにも、女性の活躍推進を積極的に行っていくべきでしょう。

一般事業主行動計画の策定・社内周知・公表について

先述したように、女性活躍推進法では自社の女性がさらに活躍できるようにするための行動計画を策定し、労働局へ届け出て、実施する必要があります。そして、策定の際に「計画期間、1つ以上の数値目標、取組内容、実施時期」の4点を盛り込まなければなりません。では具体的にその4点を計画に盛り込むとはどういうことなのか解説いたします。

行動計画の計画期間

まず計画期間ですが、現在は2025年までが最長と決められており、それ以上の長期間を見越した計画は現状認められていないため、注意が必要です。そして、およそ2~5年間ごとに行動計画をその都度の事業主ごとの状況にあわせて改定を行って行う必要があります。

行動計画の数値目標

次に数値目標についてですが、これは厚生労働省が定めた2つの区分「女性労働者に対する職業生活に関する機会の提供」と「職業生活と家庭生活との両立に資する雇用環境の整備」からそれぞれ1つずつ項目を選択し、数値目標を定める必要があります。

この数値は会社の状況や計画期間なども考慮した上でそれぞれの区分ごとに定めるものです。しかし、仕事と家庭環境との両立が既に十分できているなど、上記の2つの区分のうちの片方の取り組みが進んでいる場合は、もう片方の区分の取組に集中して取り組んでもいいとされています。

行動計画の取組内容

そして行動計画の取組内容についてですが、課題と数値目標が決まったら、次は具体的な取組内容を考案する必要があります。例えば、管理職における女性労働者割合の向上という課題であれば希望者を対象として研修を実施したり、女性労働者の定着率向上であれば女性に必要なものや不必要なものは何かの調査を行い必要な器具などは揃えるようにしたりといった内容です。

また、取組内容策定の際には、その行動計画が「男女雇用機会均等法に違反していないか」ということを忘れてはなりません。女性の活躍推進を目的とするとはいえ、それは決して男性を蔑ろにするということではなく、男女平等の考えが大前提にあるからです。そのため、原則として「男あるいは女のみを相性とした研修制度の実施」などは認められていません

しかし、1つの雇用管理区分における女性労働者の割合が4割未満であるなどの男女比が正常でないような場合を除き行動計画内容は男女平等でなければなりませんが、逆に4割未満であれば、女性を優先するような行動計画内容もよしとされています。

行動計画の実施時期

最後に、行動計画の実施時期についてですが、これは行動計画の中身である取組内容をいつ実施するのかということです。研修などであればできるだけ早めに開始したほうがいいと考えられる方や、繁忙期や閑散期などを踏まえた上で計画の実施時期を考える方もいるでしょう。

また、2022年4月からは女性活躍推進法の対処となる事業主も増えるため、行動計画書を新たに届け出なければならない方もいます。新たに義務対象となる事業主などはそういったことも踏まえた上で計画の実施時期を考える必要があるため、この実施時期も重要な要素の一つと言えるでしょう。

「えるぼし認定」によって、自社の女性活躍状況を証明できる

2022年4月からは義務対象となる企業が増えるなど、さらなる普及が進められている女性活躍推進法ですが、中には率先して女性活躍のための行動計画に取り組んでいる企業も多々あります。そういった行動計画の取組状況が良い企業は厚生労働大臣から「えるぼし認定」という評価を受けることができ、認定された企業は自社商品などにその「えるぼし認定」されたというマークを付与することができるようになるのです。

では、「えるぼし認定」を受けるためには何が必要なのか、その認定基準などについて解説いたします。

「えるぼし認定」の評価項目

まず「えるぼし認定」とは、行動計画の届出を行った企業が労働局に「えるぼし認定」の申請を行い、厚生労働省から一定基準を満たしていると判断された場合に受けることができるようになるものです。

「えるぼし認定」には3段階存在し、5つの評価項目のうち2つまでを満たすと1段階目、4つまでを満たすと2段階目、5つすべてを満たすと3段階目という評価になります。

そして、その5つの評価基準とは以下のとおりです。

採用

1つ目の評価項目は「採用」であり、採用の際の男女ごとの競争倍率が同じくらいであるかどうかということがチェックされます。

継続就業

2つ目の評価項目は「継続就業」であり、女性労働者の平均勤続年数が男性労働者の平均勤続年数の7割を超えているかどうか、あるいは女性労働者のうちで10年以上継続して働いている人の割合が男性労働者の場合の8割を超えているかどうかということがチェックされます。

労働時間等の働き方

3つ目の評価項目は「労働時間等の働き方」であり、労働者の法定時間外労働時間の平均が月毎に45時間未満であるかどうかということがチェックされます。

管理職比率

4つ目の評価項目は「管理職比率」であり、管理職内の女性労働者割合が産業ごとの平均値以上であるかどうかといったことがチェックされます。

多様なキャリアコース

5つ目の評価項目は「多様なキャリアコース」であり、過去3年以内に以下の項目のうち、大企業であれば2つ以上、中小企業であれば1つ以上の実績を有しているかどうかということがチェックされます。

1.女性労働者の非正規から正社員への転換
2.女性労働者のキャリアアップのための雇用管理区分間の転換
3.かつて在籍していた女性労働者の正社員としての再雇用
4.30歳以上の女性の正社員採用

特例認定制度(プラチナえるぼし)について

また、法改正によって2020年からさらに上位の制度である「プラチナえるぼし」という新しい制度が設けられています。この「プラチナえるぼし」の認定を受けるためには、上記の「えるぼし認定」で決められている評価項目以上の基準をすべて満たした上で、それらの実績を毎年公表する必要があるなど、様々な要件を満たす必要があるのです。

しかし、それらの要件を全て満たして「プラチナえるぼし」の認定を受けることができれば、毎年の一般事業主行動計画の策定免除などのメリットもあります。女性にとって働きやすい会社や女性が活躍できる会社を目指している事業主の方は、この「プラチナえるぼし」認定を目指してみるのはいかがでしょうか。

中小企業の女性活躍に対する助成金

女性の活躍推進は将来的な企業の発展などのメリットにも繋がると解説いたしましたが、女性の活躍推進に取り組むことは、助成金という直接的な支援を受けられることにも繋がります。それが、常時雇用している労働者数が300人以下の事業主を対象として支給される「両立支援等援助金」です。

「両立支援助成金」は1事業主につき1度限りの助成金であり、金額は47.5万円(生産性要件を満たせば60万円)となっています。

また、2020年3月末までに一般事業主行動計画を策定していた事業主は、以下の2種類の助成金のうち、どちらかを受給することができるため、対象となっている事業主の方は忘れずに受給申請をしておきましょう

両立支援等助成金(女性活躍加速化Aコース)

一般事業主行動計画で策定していた内容を2つ以上実施した際に支給されるのが、「両立支援等助成金(女性活躍加速化Aコース)」です。

2021年度での支給金額は38万円であり、生産性要件を満たせば48万円となります。このコースも常時雇用している労働者数が300人以下の事業主のみが対象となっており、それ以上の労働者を雇用している事業主は助成金を受給できないため注意が必要です。

両立支援等助成金(女性活躍加速化Nコース)

一般事業主行動計画で策定していた内容を実施した上で、設定していた数値目標を達成した際に支給されるのが「両立支援等助成金(女性活躍加速化Nコース)」です。

2021年度での支給金額は28.5万円であり、生産性要件を満たせば36万円となります。また、管理職内における女性労働者比率が15%以上であった場合には支給金額が47.5万円(生産性要件を満たせば60万円)となります。このコースも常時雇用している労働者数が300人以下の事業主のみが対象となっており、それ以上の労働者を雇用している事業主は助成金を受給できないため注意が必要です。

女性活躍推進法の問題点とは

今後の企業や社会の発展には欠かせない「女性活躍推進」ですが、2021年現在でも未だに女性活躍が上手くいっていないという企業が実在するのも確かです。

では、そういった女性活躍が上手くいっていない企業が抱えている問題・課題とは何なのかということについて解説させていただきます。

管理職志望の女性が少ない

女性労働者の中には、キャリアを積んでより大きく成長したいと考えている方もいます。しかし、女性管理職は未だに前例が少ないためか、なかなか管理職になりたいと考える女性は少ないようです。

2018年に日本経済新聞が行った意識調査では「管理職になりたい」と答えた女性はわずか2割という結果も出ています。

前例が少ないからこそ目指す人も少ないという状況になってしまっている女性管理職ですが、だからこそ今後は、女性でも管理所になれる、女性管理職といえばこんなイメージモデルというような前例を作っていくことが重要と言えるでしょう。

出産や育児などの対応が難しい

出産や育児を機に会社を辞めてしまう方は現在でも少なくありません。本人が自ら望んで退職という形もありますが、中には「本当はまだ働いていたいのに」と考えているにも関わらず、仕方なく退職されるケースも存在します。

今後、女性のさらなる活躍推進をはかるためには、女性の出産・育児と仕事の両立問題は避けては通れないでしょう。

現在でも育休などの福利厚生によるサポートがありますが、今後は問題の解決手段をそれだけで済ませるのではなく、同僚が復職の手助けをするなど、会社全体でそういった女性を支えていくことが重要となるのではないでしょうか。

女性労働者に対する指導が難しい

「パワハラ」や「モラハラ」といった言葉があるように、上司と女性従業員との接し方は社会全体でも大きな課題の一つとなっています。近年の女性活躍推進によって、様々な会社で女性労働者割合が高まってきていますが、その一方で、それまで男性労働者ばかりだったので女性労働者に対する適切な指導方法がわからないという方も増えているのです。

今後の女性活躍のためにも、女性労働者への指導方針の確立は不可欠であり、そのためにも上司のための研修などを行い、部下や新入社員の上手な指導方法を伝えていくことが重要と言えるでしょう。

女性が活躍できる行動計画のことならロームにご相談ください

2022年4月からの女性活躍推進法改正のように、今後、日本ではさらに女性活躍が推進されていくでしょう。女性活躍の推進に取組むことは、新たな女性社員の採用率や、企業評価、社会貢献度など、多くの面で企業にとってもメリットがあることです。

このように、様々な観点から考えても女性社員の雇用及び女性社員の活躍推進がより重要な問題になり、えるぼし認定などの重要性も高まっていくだろうということがわかります。

社会保険労務士法人ロームでは助成金の活用などさまざまなサポートを行っています。ロームにご相談いただければ、新たに女性活躍推進法の義務対象となって女性雇用に悩んでいる経営者のピンチもチャンスに変えるお手伝いをさせていただきます。

女性社員の採用率改善や女性が働きやすいための環境改善などを上手に実施したい社長さまはぜひお気軽にお問い合わせください。

 

 

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