社会保険労務士法人 ロームのお役立ち情報

2021.09.29

法改正2021年度版|労働法関連の改正ポイントと実務上の注意点まとめ

労働法は時代の変化にあわせて毎年のように改正が行われるため、企業の経営者や人事担当者は法改正情報を確認して必要な対応を漏れなく行う必要があります。

今回の記事では2021年1月~4月に改正法が施行された主要な労働法について解説するので、対応漏れがないかどうか今一度確認しておきましょう。就業規則の改定など必要な対応がまだの場合は早急に対応するようにしてください。

法改正1:子の看護休暇・介護休暇

2021年1月に育児介護休業法の改正法が施行され、子の看護休暇・介護休暇の取得単位と取得対象者が従来の制度から変更になりました。従業員が育児や介護と仕事を両立できるよう、より柔軟により多くの人が休暇を取得できるようにするための法改正です。

子の看護休暇・介護休暇を取得できる従業員が誰なのか、休暇を取得したときの日数計算をどのように行うのか、正しく理解しておく必要があります。

休暇の取得単位が半日から時間に変更

子の看護休暇は小学校就学前の子を育てる労働者、介護休暇は要介護状態にある家族がいる労働者がそれぞれ対象で、従来は半日単位で取得できましたが法改正により時間単位での取得が可能になりました。

休暇を取得する際の時間とは「始業の時刻から連続した時間または終業の時刻まで連続する時間」を指し、労働者から休暇取得の申出があった場合は、本人が希望する時間数で休暇を取得できるようにしなければいけません

時間単位で休暇を取得する場合は、1日の所定労働時間数に相当する時間数ごとに1日分の休暇取得として扱い、所定労働時間数に1時間未満の端数がある場合は、端数を切り上げた時間に相当する休暇を取得したら1日分として扱います。

所定労働時間が4時間以下の労働者も対象

従来は子の看護休暇・介護休暇の対象外だった「所定労働時間が4時間以下の労働者」が、法改正により休暇取得の対象者に追加されました。ただし時間単位で子の看護休暇・介護休暇を取得することが困難と認められる業務に従事する労働者は、労使協定によって休暇取得の対象外にできます。

また休暇取得対象者から「日々雇い入れられる者」は除かれる点と、労使協定があれば「その事業主に継続して雇用された期間が6か月に満たない労働者 」と「1週間の所定労働日数が2日以下の労働者」を対象外にできる点は、変更がないため従来どおりです。

法改正2:障害者の法定雇用率

障害者雇用促進法で規定されている障害者の法定雇用率が2021年3月から変更になり、従来よりも0.1%引き上げられました。

雇用率に未達の企業が納める納付金や達成している企業に支給される調整金を計算する際、基準となる法定雇用障害者数が従来から変って金額が変わる場合があり、また企業によっては法改正を受けてハローワークへの報告義務が新たに生じる場合があります。

法定雇用率が0.1%上がり民間企業は2.3%に変更

2021年3月以降の障害者の法定雇用率は以下のとおりで、民間企業の場合は従来の2.2%から2.3%に0.1%引き上げられました。


事業主区分

法定雇用率

2021年2月まで

2021年3月以降

民間企業

2.2%

2.3%

国、地方公共団体等

2.5%

2.6%

都道府県等の教育委員会

2.4%

2.5%

法定雇用率を満たす雇用者数は労働者数に法定雇用率をかけて求め、短時間労働者は0.5人としてカウントします。計算結果に1未満の端数が生じた場合は、1未満を切捨てた値が法定雇用率を満たす雇用者数です。また雇用する障害者については、短時間労働者は0.5人、重度障害者は2人としてカウントします。

従業員数43.5人以上の事業主が対象

今回の法改正により、障害者の雇用義務が生じる民間企業の範囲が従業員数45.5人以上から43.5人以上に変更になりました。従業員数が43.5人以上45.5人未満の企業は、法改正を受けて新たに一定の義務が生じるため注意が必要です。

障害者の雇用義務がある企業は、毎年6/1時点の障害者雇用状況をハローワークに報告しなければならず、障害者の雇用の促進と継続を図るための「障害者雇用推進者」を選任するよう努めることとされています。

法改正3:同一労働・同一賃金(中小企業)

パートタイム・有期雇用労働法の同一労働・同一賃金の規定は、大企業には2020年4月から適用されていましたが、2021年4月から中小企業にも適用が始まりました。

今回の改正は正社員と非正規雇用労働者の間の不合理な待遇差をなくすための法改正です。同一企業内における不合理な待遇差が禁止されるとともに、待遇に関する説明義務が従来より強化されています。

不合理な待遇差の禁止

今回の法改正により、同一企業内において正社員と非正規雇用労働者の間で不合理な待遇差を設けることが禁止されます。基本給や賞与などのあらやる待遇について不合理な待遇差を設けてはいけません。

職務内容や職務内容・配置の変更の範囲が同じ場合は待遇について同じ取扱いをする必要があり、職務内容や職務内容・配置の変更の範囲などの違いに応じた範囲内で待遇を合理的な内容で決定する必要があります。前者が均衡待遇に関する規定、後者が均等待遇に関する規定です。

例えばパートの賃金が正社員の賃金よりも低い場合、「パートだから」「期待される役割が正社員とパートでは違うから」といった説明では合理的とは言えず、法律違反となるため状況を改善するなど対応が必要です。

待遇に関する説明義務の強化

非正規雇用労働者は、正社員との待遇差の内容や理由などについて事業主に対して説明を求めることができます。非正規雇用労働者から求めがあった場合、事業主は説明をしなければなりません。説明を求めた労働者に対して不利益な取扱いをすることも禁止されています。

また今回の法改正では、有期雇用労働者に対する「雇用管理上の措置の内容及び待遇決定に際しての考慮事項に関する説明義務」が新たに設けられました。そのため有期雇用労働者を雇入れる際などに必要な説明を行うようにしてください。

法改正4:中途採用比率の公表義務

2021年4月に労働施策総合推進法の改正法が施行され、労働者数301人以上の企業に対して中途採用比率の公表が義務付けられました。労働者の主体的なキャリア形成による職業生活のさらなる充実や再チャレンジが可能となるよう、中途採用に関する環境整備を推進することを目的とした法改正です。

対象企業はおおむね1年に1回の頻度で中途採用比率を公表しなければいけません。義務の履行にあたって企業経営者や人事担当者は、中途採用比率の計算方法や公表の方法などを理解しておく必要があります。

対象は常時雇用する労働者が301人以上の企業

中途採用比率の公表義務が課されるのは常時雇用する労働者が301人以上の企業です。常時雇用する労働者とは、雇用契約の形態を問わず「1.期間の定めなく雇用されている者」、「2.過去1年以上の期間について引き続き雇用されている者又は雇入れの時から1年以上引き続き雇用されると見込まれる者」のいずれかを満たす労働者を指します。

企業は「正規雇用労働者の採用者数に占める正規雇用労働者の中途採用者数の割合」を公表する必要があり、中途採用者数とは新規学卒等採用者や内定者は含まない数字です。試用期間中の者については公表対象年度の終了時点で雇用が開始されていれば人数に含め、公表時点で退職済でも公表対象の年度内に採用して勤務を開始した者は人数に含めて計算します。

また学生のアルバイトは中途採用にカウントされませんが、契約社員を正規雇用労働者に転換した場合は、転換した年度の中途採用者として扱います。

おおむね1年に1回の頻度で公表が必要

中途採用比率の公表は、おおむね1年に1回以上、直近の3事業年度についてインターネットの利用その他の方法により求職者が容易に閲覧できるように行う必要があります

初回の公表は法施行(2021年4月1日)後の最初の事業年度内に可能な限り速やかに行い、2度目以降の公表は前回の公表からおおむね1年以内に速やかに行うようにしてください。また公表は自社HPの利用や事業所への掲示、書類の備え付けなどの方法で行いましょう。

グループ企業であっても各社個別に募集採用を行っている場合は、中途採用比率についても各社個別に公表します。ただしグループ全体で一括して採用を実施していて各社ごとの中途採用比率を計算することが困難な場合は、グループ全体の採用における正規雇用労働者の中途採用比率で代替して差し支えありません。また採用を行っていない年についてはその旨を記載して公表します。

法改正5:高年齢者就業確保措置

2021年4月に施行された改正高年齢者雇用安定法では、「70歳までの就業機会の確保」の規定が新たに追加されました。働く意欲がある人が年齢に関係なく能力を十分に発揮できるよう、高年齢者が活躍できる環境整備を図るための法改正です。

従来から規定されている「65歳までの雇用確保」と異なり、今回新設された規定はあくまで努力義務であるため罰則はありませんが、努力義務を怠った場合はハローワークによる助言や指導の対象となる可能性があります。

70歳までの就業確保の努力義務が追加

「定年を65歳以上70歳未満に定めている事業主」または「65歳までの継続雇用制度(70歳以上まで引き続き雇用する制度を除く)を導入している事業主」は、次のいずれかの措置(高年齢者就業確保措置)を講じるよう努める必要があります。

1. 70歳までの定年引き上げ
2. 定年制の廃止
3. 70歳までの継続雇用制度(再雇用制度・勤務延長制度)の導入
4. 70歳まで継続的に業務委託契約を締結する制度の導入
5. 70歳まで継続的に以下の事業に従事できる制度の導入

a.事業主が自ら実施する社会貢献事業
b.事業主が委託、出資(資金提供)等する団体が行う社会貢献事業

上記の1と2を除いて対象者を限定する基準を設けることができますが、対象者基準を設ける場合は、事業主と過半数労働組合等との間で十分に協議した上で過半数労働組合等の同意を得ることが望ましいといえます。

また労使間で十分に協議の上で設けられた基準でも、事業主が恣意的に高年齢者を排除しようとするなど法の趣旨や他の労働関係法令・公序良俗に反するものは認められません

創業支援等措置を取るには労使合意が必要

上記の5つの高年齢者就業確保措置のうち、創業支援等措置と呼ばれる4や5の措置を取る場合は、事前に計画を作成して労使合意を得なければいけません。計画には措置を講じる理由や高年齢者が従事する業務内容など一定の事項を記載し、過半数労働組合等の同意を得た上で事業場の見やすい場所に掲示するなど、労働者に計画を周知する必要があります。

法改正情報を確認して早めの対応を

今回は2021年1月~4月に改正法が施行された主要な労働法について解説しました。法改正の趣旨を踏まえた上で必要な対応を行い、子育て世代や親の介護をする世代、障害者、高齢者など、誰もが働きやすい職場環境を整えて企業の生産性アップにつなげましょう。

また2022年以降も労働や雇用に関する法律の改正が予定されています。改正対応に漏れがないよう、法改正情報を確認して就業規則の改定など必要な対応を早めに行うことが大切です。

社会保険労務士法人ロームでは、就業規則の作成や変更、助成金の活用などさまざまなサポートを行っています。法改正対応等でお困りの場合にはお気軽にご相談ください。

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