社会保険労務士法人 ロームのお役立ち情報

2021.06.11

高年齢者雇用安定法の改正|2021年4月以降の対応ポイントは?

高年齢者雇用安定法が改正されて、2021年4月から新たな規定の適用が始まりました。高年齢者の雇用に関して、従来の法律では65歳がポイントでしたが、今後は65歳だけでなく70歳もポイントになります。

改正内容を理解して適切な対応を取るだけでなく、人手不足の解消や生産性向上の観点から、高年齢者の雇用や活用のあり方も含めて今一度検討・整理しておくことが大切です。

「法改正で追加された努力義務は、通常の義務とは何が違うのか?」

「今回の改正を受けて何を対応すれば良いのか、そもそも分からず困っている…

とお悩みの経営者に、改正内容や法改正に対応する際のポイントについて解説していきます。

高年齢者雇用安定法の制定・改正の背景

高年齢者雇用安定法は、文字どおり高年齢者の雇用を安定させることを目的に制定された法律です。1971年に制定されて以降、時代の変化に合わせて何度か改正を繰り返して現在に至っています。

今回の改正も高齢化が進む社会状況に対応するためのもので、70歳までの就業確保措置が追加されました。人口に占める65歳以上の人の割合は2019年時点で28.4%になり、高年齢者を人材としていかに活用するかが社会全体の課題となっている中で行われた改正です。

高年齢者の雇用が促進されて働く意欲のある高年齢者が能力を発揮できるようになれば、従業員本人にとってプラスになるだけでなく、企業の生産性向上も期待されます。

出典:令和2年版高齢社会白書

2021年4月施行の改正法のポイント

今回の高年齢者雇用安定法の改正でおさえておくべきポイントは、「70歳までの就業確保措置」の新設です。新設規定の対象となる事業主の範囲や措置の具体的な内容を理解しておく必要があります。

また当規定の追加によって再就職援助措置・多数離職届の対象者が増えた点と、新設された規定に違反した場合の罰則や行政指導の有無についてもおさえておきましょう。

70歳までの就業確保措置の新設

これまでの高年齢者雇用安定法では「65歳までの雇用確保措置」を講じることが企業に義務付けられていました。今回の改正で「70歳までの就業確保措置」を講じる努力義務が新たに追加され、次の事業主が努力義務の対象になったのです。

 

・定年を65歳以上70歳未満に定めている事業主

・65歳までの継続雇用制度(70歳以上まで引き続き雇用する制度を除く)を導入している事業主

 

今回の法改正の影響を受けるのは上記の事業主なので、たとえば既に定年制を廃止している企業の事業主は改正の影響を受けません。

 

対して上記に該当する事業主は、次に示す5項目のうちいずれかの措置(高年齢者就業確保措置)を講じるように努めなければならないのです。

 

1. 70歳までの定年引き上げ

2. 定年制の廃止

3. 70歳までの継続雇用制度(再雇用制度・勤務延長制度)の導入

4. 70歳まで継続的に業務委託契約を締結する制度の導入

5. 70歳まで継続的に以下の事業に従事できる制度の導入

 a.事業主が自ら実施する社会貢献事業

 b.事業主が委託、出資(資金提供)等する団体が行う社会貢献事業

 

なお、3~5の措置を講じる場合は、対象者を限定する基準を設けられますが、その場合は過半数労働組合等の同意を得ることが望ましいとされています。

 

再就職援助措置・多数離職届の対象者の追加

70歳までの就業確保措置が努力義務となったことで、再就職援助措置と多数離職届の対象者が追加になりました。2021年4月以降は従前と対象範囲が変わるので、措置を講じる場合や届出を行う際には注意してください。

再就職援助措置

解雇等により離職する高年齢者等には「求職活動に対する経済的支援」、「再就職や教育訓練受講等のあっせん」、「再就職支援体制の構築などの再就職援助措置」を講じるよう努めることとされています。

多数離職届

同一の事業所において1か月以内に5人以上の高年齢者等が解雇等により離職する場合は、離職者数や当該高年齢者に関する情報等をハローワークに届け出なければいけません。

出典:高年齢者雇用安定法 改正の概要

また「事業主都合の解雇等」または「継続雇用制度の対象となる高年齢者に係る基準に該当しなかったこと」により離職予定の高年齢者等が希望するときに作成する「求職活動支援書」についても、65歳以上70歳未満で離職する高年齢者が対象として追加されています。

罰則や行政指導の有無

今回の法改正で追加された規定は、努力義務であって義務ではありません。一般的に義務の場合は違反すると罰則が科されます。しかし、努力義務とはあくまでも努力することを義務付けるものであり、70歳までの就業確保措置を講じなくても罰則を受けることはありません。

ただし努力義務を果たしていないと、ハローワークから指導を受ける可能性があります。指導を繰り返し受けたにもかかわらず何も具体的な取り組みを行わない企業には、勧告書が発出されることもあるのです。さらに勧告に従わない場合には企業名が公表される場合があるので、法の趣旨を踏まえて適切に対応するようにしてください。

経営者が法改正対応を行うときのポイント

今回の法改正に沿う対応を行う場合、5つある措置のうちいずれを選択するのかを決めたり、ケースによっては就業規則の見直し等を行ったりする必要があります。

講じる措置の種類によっては高年齢者雇用安定法で労使協議が義務付けられていないものもありますが、各企業の実態に合った措置を講じるためにも、従業員の意見を確認した上で対応内容を検討すべきでしょう。

働きやすい職場環境を整えることで、年齢を重ねてもいつまでも働き続けたいと従業員が思えるようになり、優秀な人材の流出を防ぐことにつながります。

継続雇用と創業支援等措置の選択

5つある就業確保措置は、継続雇用に関する措置と創業支援等措置の2つに分かれます。定年の引き上げ、定年制の廃止、継続雇用制度の導入が継続雇用に関する措置、業務委託契約を締結する制度と社会貢献事業に従事できる制度の導入が創業支援等措置です。

継続雇用と創業支援等措置のいずれを選択するかは、各企業の実態に照らし合わせて検討が必要ですが、労使間で十分に協議を行って高年齢者のニーズに応じた措置を講じることが望ましいといえます。

なお、創業支援等措置を講じる場合は、計画を作成したならば過半数労働組合等の同意を得て、その内容を労働者に周知しなければいけません。継続雇用か創業支援等措置かで選択後の流れが変わる点に注意しましょう。

措置の対象者を限定する際に基準となる考え方

就業確保措置のうち継続雇用制度の導入と創業支援等措置では、対象者を限定する基準を設定できます。ただし事業主が恣意的に高年齢者を排除しようとするなど、法の趣旨やほかの労働関係法令、公序良俗に反するものは当然のことながら認められません。

 

【不適切な事例】

・会社が必要と認めた者に限る⇒ 基準がないことと等しく、改正の趣旨に反する

・上司の推薦がある者に限る ⇒ 〃

・男性(女性)に限る ⇒ 男女差別に該当

・組合活動に従事していない者に限る ⇒ 不当労働行為に該当

基準の設定にあたっては過半数労働組合等の同意を得ることが望ましく、事業主と過半数労働組合等との間で十分に協議した上で決めたほうが良いでしょう。

なお、継続雇用制度や創業支援等措置を実施する際、以下の事項を就業規則や創業支援等措置の計画に記載した場合には、契約を継続しないことが認められています。

 

・心身の故障のため業務に堪えられないと認められること

・勤務(業務)状況が著しく不良で引き続き従業員としての職責を果たし得ないこと

 

人事・賃金制度や就業規則の見直し

就業確保措置を講じるときに人事・賃金制度や就業規則の見直しが必要になる場合があります。たとえば新たに再雇用制度を導入するケースでは、再雇用後の就業形態や賃金をどうするのかを決めなければいけません。

まず就業形態については、短時間や隔日での就業制度など、高年齢者の希望に応じた就業が可能となる制度を導入することが望ましいといえます。

また再雇用後の賃金はそれ以前に比べて下がるのが一般的ですが、2020年4月に同一労働同一賃金を定めるパートタイム・有期雇用労働法が施行された点には注意が必要です。極端な賃金カットは不合理な待遇差と見なされる可能性があるため避けるべきでしょう。就業の実態などを考慮した上で、業務内容に応じて適切に賃金を決定するよう努めなければなりません。

常時10人以上の労働者を雇用する企業には、就業規則の作成義務があります。したがって定年の引き上げなどを行う場合には、就業規則を変更して労働基準監督署に届け出なければいけません。継続雇用制度の延長等の措置を講じる場合や、創業支援等措置に係る制度を社内で新たに設ける場合も就業規則の変更と届出が必要です。

 

高年齢労働者の個別の事情に応じた配慮

高年齢者には体力がある人もいればそうでない人もいて、65歳を過ぎた全員が若い世代の人と同じように働けるわけではありません。それぞれの労働者が個々の置かれた状況の中でその能力を十分に発揮できるよう、健康等への配慮が求められます。

継続雇用制度などによって経験豊富な高年齢労働者に従前と同様の業務を担当してもらうのが良いケースもありますが、必要であれば高年齢者の体調面などを考慮して、本人の希望も踏まえつつ業務内容について配慮するようにしてください。

創業支援等措置を講じるときの流れ

今回の改正で高年齢者雇用安定法に新たに規定された創業支援等措置を講じる場合、計画を作成したならば過半数労働組合等の同意を得て労働者に周知する必要があります。

計画に記載しなければいけない事項や労働者に周知するときの方法が法律で決まっているので、実際に計画を作成する際には記載漏れなどがないように注意してください。

所定の事項を記載した計画を作成する

創業支援等措置を講じるときには、以下の事項を記載した計画を作成する必要があります。

1. 高年齢者就業確保措置のうち、創業支援等措置を講じる理由

2. 高年齢者が従事する業務の内容に関する事項

3. 高年齢者に支払う金銭に関する事項

4. 契約を締結する頻度に関する事項

5. 契約に係る納品に関する事項

6. 契約の変更に関する事項

7. 契約の終了に関する事項(契約の解除事由を含む)

8. 諸経費の取り扱いに関する事項

9. 安全および衛生に関する事項

10. 災害補償および業務外の傷病扶助に関する事項

11. 社会貢献事業を実施する団体に関する事項

12.1~11のほか、創業支援等措置の対象となる労働者の全てに適用される事項


上記のうち3の金銭については、業務の内容や当該業務の遂行に必要な知識、経験、能力、業務量等を考慮することが必要です。また支払期日や支払方法についても記載し、不当に減額したり支払いを遅延したりしてはいけません。

また4に示した契約締結の頻度については、高年齢者それぞれの希望を踏まえつつ業務の内容や難易度、量などを考慮して、適切な業務量や頻度による契約を結ぶ必要があります。

日々の事業経営で忙しい経営者にとっては、時間が取れずに自身で計画を作成するのが難しい場合もあるはずです。

計画を作成する方法について詳しくは以下の厚労省HPで確認できます。ただし実際に計画を作成する際には、関係法令に関する知識が必要です。計画の作成にあたっては、専門家である社会保険労務士に依頼することも検討してみてください。

厚労省HP|高年齢者雇用安定法の改正

過半数労働組合等の同意を得る

作成した計画は、過半数労働組合等の同意を得る必要があります。同意を得る際には次の事項をしっかりと説明するようにしてください。

・労働基準法等の労働関係法令が適用されない働き方であること

・そのために計画を定めること

創業支援等措置を選択する理由


なお、過半数労働組合等とは、労働者の過半数を代表する労働組合がある場合にはその労働組合、労働者の過半数を代表する労働組合がない場合には労働者の過半数を代表する者を指します。

労働者に計画を周知する

過半数労働組合等から同意を得た計画は、次のいずれかの方法で労働者に周知しなければなりません。

・常時当該事業所の見やすい場所に掲示するか、または備え付ける

・書面を労働者に交付する

・磁気テープ、磁気ディスクその他これらに準ずるものに記録し、かつ、当該事業所

に労働者が当該記録の内容を常時確認できる機器を設置する(例:電子媒体に記録

し、それを常時モニター画面等で確認できるようにするなど)

65歳超雇用推進助成金の活用がおすすめ

高年齢者雇用安定法の改正法に規定された70歳までの就業確保措置を講じる際、経営者におすすめしたいのが65歳超雇用推進助成金の活用です。当助成金は65歳以上への定年の引き上げや定年制の廃止、継続雇用制度の導入などを行った事業主が受給できます。

助成金を受給できる要件は細かく決まっており、ケースによっては就業規則等の作成や変更が必要ですが、定められた要件を満たせば助成金を受給できる上に返還は不要です。受け取れる助成金はしっかりと受け取り、経営資金のひとつとしてぜひ活用してください。

65歳超継続雇用促進コース

以下に示すいずれかの制度を実施し、制度を規定した労働協約または就業規則を整備しているなど、一定の要件を満たす場合に助成金を受け取れるコースです。

・65歳以上への定年引上げ

・定年の定めの廃止

・希望者全員を66歳以上の年齢まで雇用する継続雇用制度の導入

他社による継続雇用制度の導入


制度を規定した際に経費が必要となった場合に支給を受けられます。助成金の支給額は実施した措置の内容等に応じて異なり、具体的な金額は以下のとおりです。

出典:65歳超雇用推進助成金

高年齢者評価制度等雇用管理改善コース

高年齢者向けの雇用管理制度の整備等に係る措置を実施した事業主に対して一部経費の助成を行うコースで、以下の措置が対象です。

1.  高年齢者の職業能力を評価する仕組みと賃金・人事処遇制度の導入または改善

2.  高年齢者の希望に応じた短時間勤務制度や隔日勤務制度などの導入または改善

3.  高年齢者の負担を軽減するための在宅勤務制度の導入または改善

4.  高年齢者が意欲と能力を発揮して働くために必要な知識を付与するための研修制度の導入または改善

5.  専門職制度など、高年齢者に適切な役割を付与する制度の導入または改善

6.  法定外の健康管理制度(胃がん検診等や生活習慣病予防検診)の導入 等


雇用管理整備計画書を提出して内容の認定を受けているなど、一定の要件を満たす場合に支給を受けられます。支給額は、中小企業の場合で支給対象となる経費に60%、中小企業以外の場合には45%を乗じた金額です。(一定の場合には中小企業75%、それ以外の企業60%を乗じて計算)

高年齢者無期雇用転換コース

50歳以上かつ定年年齢未満の有期契約労働者を無期雇用に転換させた事業主に対して助成

を行うコースです。無期雇用転換計画書を提出して計画の認定を受けているなど、一定の要件を満たす場合に支給を受けられます。

基本的な支給額は中小企業の対象労働者1人につき48万円、中小企業以外では38万円で、一定の要件を満たす場合にはそれぞれ60万円と48万円となります。ただし、支給申請年度に1適用事業所あたり10人が上限です。

就業規則改定や助成金活用は社労士に相談を

今回の法改正に対応するために就業規則の改定などを行う場合、高年齢者雇用安定法の規定を正しく理解するのはもちろんのこと、「自社に見合った制度設計になっているか」を企業ごとの視点で検討すべきでしょう。

仮に「法律で規定されたことだから仕方なく……」といった理由でよく考えずに制度を導入したり就業規則に記載したりすると、職場の実態と制度設計が乖離してしまい、高年齢者が働きづらいと感じて生産性が低下することにもなりかねません。

助成金についても同様で、高年齢者が働きやすい職場環境作りへの意識が欠けて単にもらうことだけを目的にしてしまうと、助成金をうまく活用できない場合があります。助成金を活用して企業としてどのように成長したいのか、従業員が働きやすい環境を整えていかに生産性アップにつなげるのか、助成金受給後の活用方法まで含めて考えることが大切です。

助成金活用を得意とする社会保険労務士法人ロームでは、人事評価制度の導入や就業規則の改定など、幅広い視点から企業を経営する方々のサポートを行っています。600社以上の顧問先にサービスを提供し、創業以来培ってきた豊富な経験を活かして各企業に見合った提案を行うことが可能です。

今回の法改正への対応でお困りの方や助成金の活用を検討されている方は、社会保険労務士法人ロームにお気軽にお問い合わせください。

法改正の趣旨や目的を踏まえた対応が大切

今回行われた法改正の趣旨は、少子高齢化による深刻な人口減少への対策として、高年齢者を雇用の場で活用することにあります。高年齢者を人材としてどのように活用するのかは、今後企業経営を考える上で欠かせない重要な視点です。

社会保険労務士法人ロームは、高年齢者を上手に活用することで、人手不足の緩和と生産性のアップを同時に実現するお手伝いをしたいと思っています。無料相談も行っていますので、事業経営で何か困りごとがある方はぜひご相談ください。

 

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